武見敬三厚生労働相が7月に訪中し、中国保健衛生当局トップの雷海潮国家衛生健康委員会主任と北京で会談。感染症の薬やワクチンの開発に協力する考えで一致したことが、あらぬ憶測を生んでいる。
〈習近平政権が適切な情報公開を怠ったため、感染防止や水際対策などで中国および各国の初動は遅れ、大変な事態を招いた。中国は日本の製薬企業の社員を不当に拘束している国でもある。そのような国と一緒にワクチンを開発できると、武見氏は本当に思っているのか〉
産経新聞は社説で、こんな批判を展開した。
そうした批判が出ることを、武見氏が予測しないはずがない。9月の自民党総裁選を控え、退任間近の武見氏はなぜリスクを取ってまで訪中したのか。
武見氏には世界保健機関(WHO)をめぐり、苦い経験がある。2006年に第一次安倍晋三政権で厚労副大臣だった時、急死したWHO事務局長の後任として、アジア地域の責任者だった尾身茂WHO西太平洋事務局長を就けるべく陣頭指揮を取った。中国は、香港のマーガレット・チャンWHO事務局長補を擁立。日中の対決となったが日本は中国に敗れ、WHOでの中国の主導権が確立するきっかけとなった。
「武見氏は尾身氏敗北の責任者。中国の問題点は熟知しているはずだ。閣僚も経験したので、次はWHO事務局長になりたいと、中国に尻尾を振っているのでは」
政府関係者は冷ややかにそう語るのだった。
(喜多長夫/政治ジャーナリスト)