それは今から10年ほど前のことだ。恐ろしい映像を見慣れているはずのオカルトファンさえも息を飲む、ゾッとする動画がインターネット上にアップされた。
画面に映し出されるのは、独特の色彩で気味の悪い男を描いた、一枚の絵画。するとどこからともなく、すすり泣くような声が聞こえてくる。泣き声に合わせたように煙のようなものが立ち込め、突然ドアがバタンと閉まったかと思うと、壁に掛けられていたその絵画がガタンと床に落ちる…。
そんなリアルなポルターガイスト現象の数々が映し出されていたのである。
この不気味な動画をアップしたのは、イングランド北部の町に住むショーン・ロビンソンという男性だった。彼は2010年に祖母から、この「苦悩に満ちた男」と名付けられた絵画を、遺品の一部として譲り受けたという。
生前、祖母がロビンソンに語ったところによれば、この絵は画家自身が自分の血と絵の具を混ぜ合わせて描いたものだそうで、完成後、画家は何を思ったか、自ら命を絶ってしまったという。
その後、祖母がこの絵を部屋に飾るようになると、誰もいない部屋で話し声やすすり泣くような声が聞こえるようになり、やがて「謎の影」が家じゅうを彷徨い歩くようになった。
恐ろしくなった祖母は、自殺した画家の呪いがこの絵に取り憑いていると考え、二十数年もの間、屋根裏に仕舞い込んでいた。
だが、オカルトや呪いといった類の話など信じたことがないロビンソンは、何の恐怖心も抱かず、自宅に絵画を持ち帰った。
異変が起き始めたのは、その夜から。息子が階段から足を踏み外して転落したり、「誰もいない部屋で誰かに髪を撫でられた」と夫人が訴えるなど、数々の怪奇現象が起こるようになったのである。
さらには夜中になると決まってすすり泣きや悶絶するような声が聞こえ、家族全員が目の前を横切る男の影を目にするようになった。オカルトを信じないロビンソンも、さすがに恐怖にさいなまれ、絵の前にビデオカメラを設置した。
すると冒頭で挙げたような、様々な超常現象が映像として記録されていたという。
ロビンソンは絵画の謎を解くため、超常現象研究グループに調査を依頼。そして2013年5月、研究グループのメンバーら20名により、絵画は世界最恐の心霊スポットとして知られるイギリスの幽霊屋敷「チリンガム城」に持ち込まれ、降霊実験が行われることになった。
「要は城にいる霊と絵画に取り憑いた悪霊を交信させ、その正体を把握するというものでした。ところが両者は激しく反発し合い、次々ととんでもないポルターガイスト現象が発生。とてもではないが、実験どころではなくなりました」(オカルト研究家)
つまり絵画に取り憑いた悪霊は、世界最恐の幽霊も手に負えぬほどの深い恨みを持っていたということか…。
絵画は現在もロビンソンにより、厳重に保管されているという。
(ジョン・ドゥ)