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パリ五輪サッカー決勝「フランスVSスペイン」で見た日本との「埋めがたい選手層の厚さ」

 サッカーは点を取るスポーツ。それを思い知らされた、実に面白い決勝だった。

 パリ五輪サッカー決勝は、フランスVSスペインという優勝候補同士の対決となった。試合は激しい点の取り合いとなって延長戦までもつれ込み、スペインが5-3で勝利。1992年のバルセロナ大会以来、32年ぶりの金メダルに輝いた。

 パワーとスピードという個の能力を前面に出してくるフランスと、高い技術とパスで流れるようなパスワークで攻めてくるスペイン。対照的なチームの激突だったが、お互いに自分たちのサッカーを展開する好ゲームだった。

 立ち上がりからホームの利を生かし、フランスが主導権を握ると、前半11分に先制。それでもフランスの勢いに慣れてきたスペインは前半18分、日本戦で2ゴールを決めたフェルミン・ロペスが同点ゴールを押し込んだ。勢いに乗ったスペインは25分、28分と立て続けにゴールを決め、一気に逆転に成功する。

 後半に入ると、フランスが迫力のある攻撃で圧力をかけ、スペインゴールに迫る。それでもスペインは組織的な守備で跳ね返し、2点差を逃げ切るかと思われた。ところが後半34分、右サイドで得たフリーキックからフランスが1点を返し、アディショナルタイムにPKを得て同点に追いつくと、試合は延長戦へともつれ込んだ。

 勢いはフランスにあると思われたが、延長戦に入るとスペインが再び主導権を握り、前半と後半に1点ずつ追加して試合を決めた。

 両チームの凄さは、ゴールに向かう姿勢。フランスがシュート29本(枠内12本)、スペイン18本(枠内8本)と、両チーム合わせて50本近いシュートを打っている。特にスペインのゴールは、ここ一番の大事な時に決める決定力があった。そこが日本との大きな違いであり、永遠の課題ともいえる。

 選手層の厚さにも、日本とは大きな差があった。今大会、日本戦と決勝戦で2ゴールを決めて金メダル獲得に貢献した21歳のフェルミン・ロペスは「FCバルセロナで活躍している」「EURO(欧州選手権)に出場している」といわれているが、1年ちょっと前までは無名の選手だった。22-23年シーズンはレンタルで、3部リーグのクラブでプレーしていた。

 それが昨年夏、アメリカ遠征に帯同すると、レアル・マドリードとのプレシーズンマッチで、後半途中から出場して1ゴール1アシスト。トップチームに昇格する。

 シーズン当初は出番がなく、それでもローテーションやケガ人の影響でベンチ入りすると数少ないチャンスをモノにし、終盤には先発出場するようになり、代表にも選ばれた。

 EUROで試合に出場したのは、アルバニア戦の後半途中からの1試合のみ。EUROに出場したとはいえ、まだA代表では主力とはいえない。

 それでもこうした選手が次から次に出てくるのがスペインの強さであり、層の厚さに繋がっている。

 現に五輪代表に選ばれる世代にはラミン・ヤマル、ニコ・ウィリアムズ、ペドリ(EUROでケガ)、ガビ(大ケガから復帰を目指す)など、すでにA代表で主力としてプレーしている選手がたくさんいる。

 日本の五輪世代の中でA代表の主力といえるのは久保建英ぐらい。選手層の違いはあまりにも大きい。

(渡辺達也)

1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。

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