気象庁による電撃発表から1週間が経過した8月15日、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の「呼びかけ」が終了した。
しかしここで肝に銘ずべきは、1週間という期間は防災対応上の「受忍可能期間(海水浴場の閉鎖措置などにいつまで耐えられるか、など)」にすぎず、南海トラフ巨大地震の発生確率が通常時よりはるかに高い状況が解消されたわけではない、という重大な点だ。
事実、8月8日に宮崎県日向灘(南海トラフの西端領域)で発生したマグニチュード7.1の大地震によって、南海トラフ巨大地震(マグニチュード8~9)の発生確率は「通常時(30年以内に70~80%)の約5倍」に上昇したとされている。
そうして急上昇した巨大地震の発生確率は、時間の経過とともに下降していくとされるが、前震(今回の場合は日向灘での地震)の発生から1週間でゼロになるわけではない。海外では前震(マグニチュード7クラス)の発生から2週間後に巨大地震(マグニチュード8クラス)が発生したケースが2例、報告されている。
加えて、地震学の専門家の多くが「南海トラフ巨大地震の発生確率が通常時より高い状況は、少なくとも半年間は続く」と警告しているのだ。
そうした緊迫感溢れる状況下、8月15日の呼びかけ終了の陰で秘かに囁かれているのが、今夏の酷暑下で南海トラフ巨大地震が発生した場合の地獄絵図である。最も懸念されるのは、巨大地震にともなう「大規模停電」だ。防災学の専門家が次のように指摘する。
「巨大地震による停電は、大規模かつ長期間に及びます。当然のことながらその間、エアコンは使用できません。冬場であれば屋外で焚火をして暖を取ることもできるが、被災した人々が酷暑から逃れる手段は限られている。エアコンが効いた車に避難しても、ガソリンも飲み水も、すぐに底をついてしまいます。その結果、建物の崩壊や大津波から生き残った人々が、想像を絶する灼熱地獄の中でバタバタと倒れていくのです」
今年の酷暑は、まだまだ続く。その酷暑期間は、南海トラフ巨大地震の発生確率が通常時よりはるかに高い期間に、ピッタリと重なっているのだ。
(石森巌)