昨年のWBCでは、ピンチを救う好守備とペッパーミル・パフォーマンスで一躍、時の人となったセントルイス・カージナルスのラーズ・ヌートバー。この夏、球団本拠地のあるセントルイスのアイリッシュパブを借りて「The Noot Baar」を開店させた。アメリカ人もコテコテのオヤジギャグが好きなようだ。
この「The Noot Baar」は、ミズーリ州セントルイスに本社を置く、バドワイザービールを製造販売するアンハイザー・ブッシュ社とコラボ。21歳以上のアメリカ在住カージナルスファン向けの、8月15日から18日までの期間限定イベントだった。
店内にはヌートバーの思い出の品などが展示されたスポーツバー仕様にアレンジされ、MLB公式インスタグラムでも紹介された。
しかも「The Noot Baar」営業最終日のカージナルスの対戦カードは、大谷翔平と山本由伸を擁するドジャース戦。同日、大谷は敵地で「1番・DH」で先発出場。5回に2試合連発の39号先制ソロを放ち、史上6人目となる本塁打40と盗塁40の「40-40」達成に向け、過去最速ペースで残り1本と3盗塁に迫る大活躍だった。
ヌートバー本人はスタメン出場こそならなかったものの、8回裏に代打で登場すると、大谷を意識したような今季8号ソロの弾丸ライナーを、ライト後方のブルペンに叩き込んだ。
大谷と自身のアベックホームランのおかげでさらに注目されることになった「The Noot Baar」だが、日本展開の見込みはあるのか。
可能性はある、と分析するのは、国内の酒造卸売会社幹部だ。
「以前、有楽町と新橋の間の高架下に、バドワイザービールのロゴをまとったバドガールがダンスも披露する『バドワイザーカーニバル新橋店』がありましたが、同エリアの耐震工事を機に、惜しまれながら閉店。その後、日本国内でバドワイザービールの製造販売を請け負っていたキリンが、2018年末で製造販売を終了しました。以降はアメリカと韓国で製造したバドワイザービールの販売を、アンハイザー・ブッシュ・インベブ社(ABI社、アンハイザーブッシュ社の親会社)日本法人が手掛けていますが、日本のサラリーマンには知名度が高い地元カージナルス所属のヌートバー人気を、バドワイザーの売り込みに利用しない手はない。だからこそ、MLB日本版公式アカウントが『The Noot Baar』を紹介したとみています」
課題は「The Noot Baar」の開設場所だと、この幹部は続ける。
「来年、大谷と山本、カブスの鈴木誠也と今永昇太が凱旋帰国する東京ドームシティは三井系です。旧三井財閥が再興したのが、今のサッポロビール。昔ほど極端ではありませんが、旧財閥と国内ビール4社は近い関係にある。ビール世界シェア3位のアンハイザー・ブッシュ・インベブ社が思うように日本国内シェアを伸ばせないのは、旧財閥系の商業施設や観光施設での店舗展開が難しいからなんです。そんな事情があるため、東京ドームでの来季メジャー開幕戦で、競合するバドワイザービールを扱う『The Noot Baar』開店は見込めません。ただ、希望的観測を語るなら、4年後のロサンゼルス五輪に合わせて、代理店や森ビル、野村不動産あたりの大手デベロッパー、ABI社、南カリフォルニア大学出身のヌートバーのコラボでスポーツバー『The Noot Baar』を開店、バドガールを復活させたら面白いナイトスポットになりそうですね」
ヌートバーの曽祖父は、ロナルド・レーガン元大統領の支援者だったカリフォルニアの大実業家で、商才は曽祖父ゆずり。現在、森永製菓のプロテインバー、ZOFF、そしてイチローに代わり佐藤製薬のユンケルと、3社のCMに登場しているヌートバー。ビールのCMに登場する日は、近いかもしれない。
(那須優子)