夏のローカル競馬は今週で幕。今年で60回を数える新潟恒例のハンデ重賞、新潟記念が掉尾を飾るメインとして行われる。 酷暑の中、まさに文字どおり熱い戦いが毎週繰り広げられてきたが、その締めにふさわしく、人気薄のクセ者がそろい、馬券的にもなかなか面白い。
暑さに強い牝馬と言われるが、それを象徴するように今年は想定段階で半数の7頭を牝馬が占めている。桜花賞、オークスとともに3着だった3歳馬ライトバック、前半戦最後のGⅢマーメイドS1、2着馬のアリスヴェリテ、エーデルブルーメなどが出走態勢を整えており、人気の一端を担う存在だろう。
牡馬では七夕賞を快勝したレッドラディエンスが準備万端で、同2着のキングズパレスなど、なかなかの顔ぶれ。それだけに見応え満点の激しい競馬が見られそうだが、まずは、どのような傾向があるのか、データをひもといてみよう。
02年に馬単が導入されて以降、これまでの22年間、その馬単による万馬券は10回(馬連は7回)。この間、1番人気馬はわずか2勝(2着4回)、2番人気馬は6勝(2着1回)で、1、2番人気馬によるワンツー決着は2回のみ(ともに2番人気馬が勝利)。 こうしてみると、人気どおり簡単に決着を見ない重賞であることがわかる。
年齢的には4歳馬が6勝(2着6回)、5歳馬も7勝(2着9回)とよく連に絡んでいる。4歳馬にかんしては牝馬の活躍が目立っている。今年はアリスヴェリテ、ゴールドプリンセス、シンリョクカの3頭が出走を予定しており、そのあたりは頭に入れておいた方がいいだろう。
ハンデ戦だけに当然、背負う斤量が気になるところだが、55〜56キロが最も連に絡んでいて57〜58キロの馬も4勝(2着6回)を挙げている。それなりに評価されている馬にチャンスが多いということだ。
ただ今年は牝馬に有力どころが多く、斤量は牡馬よも軽くなる。ライトバックは3歳馬ということで恐らく53キロまで。アリスヴェリテはマーメイドSが50キロでの勝利だっただけに1キロ増の51キロ、同2着のエーデルブルーメは1キロ減の53キロではなかろうか。
例年、牝馬の参戦は2〜3頭ぐらいだが、今年は頭数も多い。それだけに牝馬優勢とみる向きも多いと思うが、当欄が注目するのもその牝馬。ただ、有力どころではなく、人気薄で〝暑さに強い牝馬〟の典型とも言えるファユエンである。
勢司調教師が目を細めながら状態のよさを話す。
「冬場は体が硬くなってしまうが、夏場は柔軟になって、とにかく調整が楽。使い詰めだけどカイバ食いは落ちないし、稽古の動きが実に軽やか」
前走、中京での小倉記念は8着に敗れたが、開幕週の馬場ということもあり、この馬には走破時計が速すぎた。それに若干、体に余裕があって、追ってからの反応が鈍かったのは、そのせいだろう。それでも勝ち馬とはコンマ7秒差。決定的な敗北とは言えない。
新潟は最終日ということで馬場も荒れてきており、レコードが出るような速いタイムでの決着にはなるまい。昨年も新潟記念に挑戦して8着(ハンデは53キロ)に敗れたが、この時は昇級初戦だった。それだけに勝ち馬とコンマ4秒差の勝負は評価していいだろう。
前走53キロで8着だったことを思うと、ハンデは52キロまで。連に絡んではいないが、直線の長い新潟コースは間違いなく合っている。
天皇賞・秋を制したサクラチトセオーの他、近親に活躍馬が多く、力を要する馬場を得意としたアグネスデジタル(天皇賞・秋、フェブラリーSなどGⅠ6勝)が母の父。道悪も問題なく、晴雨にかかわらず大きく狙ってみたい。