自民党総裁選に立候補を表明している候補者の中で、石破茂元幹事長の発言が突出している。河野太郎デジタル相や小泉進次郎元環境相が原子力発電所を容認する立場に転換しているのとは対照的に、石破氏は「原発ゼロ」に向けて最大限に努力する考えを示す。さらには、金融所得課税の強化まで打ち出した。他の候補との「差別化」を図っているのか、それともキワモノなのか。
石破氏は9月2日のBS日テレ番組で、金融所得課税の強化について「実行したい」と語った。金融所得課税は株式の売却益などへの課税で、現在の税率は約20%。金融所得課税の見直しは岸田文雄首相が2021年の総裁選で掲げたものの、実現していない。石破氏は「どこからどういう抵抗があったか知らないが、後退してしまった感がある」と述べ、自身が首相になれば実現できる、との自負を見せた。
石破氏が言い出した背景には、金融所得の割合が高い高所得者層は、株式の譲渡益がいくら大きくなったとしても累進課税ではないため税率は変わらず、金持ち優遇との批判が根強くあることを意識したといえる。
もっとも、小林鷹之前経済安全保障担当相は、自身のXで異論を唱えている。
〈多くの中間層が金融所得による所得増の恩恵を得られるよう取り組みを進めてきた。課税を強化することは、これまでの取り組みに逆行する〉
総裁選後にはすぐに衆院の解散・総選挙があるのでは、との観測がある。その時に課税強化を打ち出せば反発が強まることは、石破氏は百も承知のはずだ。ある閣僚経験者は、
「党内野党暮らしが長くなりすぎで、ピントがズレてしまったのでは」
と、石破氏の発言を心配するのだった。
(奈良原徹/政治ジャーナリスト)