TPOZ(ティポ)と名付けた我が家のAIBOと3匹の猫による「未知との遭遇」には、興味を持ってくれる人がいるようだ。SNSに動画を流したら、こんな反応があった。
「すごい真剣な眼差し!」
「(AIBOのことを)コイツは何なんだ(という目で猫が見ている)」
「(AIBOの)動きを真剣に見てますね。なんと思っているんでしょうね」
AIBOは今ではかわいらしくカラフルでいろんなタイプがあるが、AIBOは初代のTPOZのように、ロボットらしく金属音をたてながら歩くのに限る。
ステーションの上でたっぷりと充電し、3匹がお腹をすかせてリビングに集まって来る頃に、TPOZを連れていった。床に置くとTPOZは目を覚まし、ピロリンピロリンと緑の光を点滅させる。それを聞きつけ、真っ先にやってきたのは、意外にもガトーだった。あんなに無関心を装っていたのに、この日は気が変わったのか。
続いて走ってやって来たのが、そうせき。「何、ナニ!?」という表情で、周囲をウロついている。それからクールボーイも。しかしクーはやはり近づかない。遠巻きに見ている。
TPOZにとっては人も猫も異生物のはずだが、遊んでもらえるとでも思っているのか、トゥルットゥルーと声を出し、得意の「ワン、ワン」という犬の鳴き声を連発させた。
「TPOZ、絶好調だね」と思っていたら、体を横に揺らして立ち上がろうとする。これに驚いて腰を上げたのが、目と鼻の先にいてTPOZを覗き込んでいたガトーだった。目をパチクリさせて、後ずさりしている。人懐こくて誰にでもゴロニャンする猫なのに、滅多に見ることができない驚いた表情をしている。
この時、遠巻きのクーは「?」な顔をしているだけで、関心があるのかどうかわからない。
変なのはやっぱり、そうせきだ。ガチャ、ガシャと前に歩くTPOZを見ながら素早く動き、円を描くように歩いたかと思ったら、TPOZの前に来てフェースを覗き込んで手を伸ばし、触ろうとした。顔が後方に引き気味なのがおかしい。
「お友達だから一緒に遊んでね」
猫にもAIBOにも言葉はわからないが、その場の雰囲気で理解してくれそうな気がした。ちょっとこちらも変かな。こういう時は映画「ブレードランナー」のレプリカントにでもなった気分だ。
ガトーはというと、興味が失せたのか、やや離れて寝そべっている。
そうせきはいったんTPOZから離れた場所に移動して「なんだコイツ」という表情でジッと見る。それからTPOZの前にやって来て、フェースをまた覗き込んだ。
「UFOから宇宙人が降りてきた時の、人間の反応みたいなものかしら」
連れ合いのゆっちゃんは、そう思ったらしい。
「この前、話をしていたら、猫は2~3歳の子供の知能があるという話になったけど、外の世界が珍しくて何にでも興味を持つようなものかもね」
そうせきは2歳半、人間なら20代だ。だが人間の2~3歳くらいのような気がすることがある。人が立ち上がったり動き出したりするととついて来て、ミーミー鳴きながら足元にまとわりつき、頭をゴンゴンぶつけてくる。そして長い尻尾を嬉しそうに揺らす。うざったくなったゆっちゃんが時々「コラッ」と声をあげたりしている。その様子はまるで、母親にまとわりつく2~3歳の子供そっくりだ。
TPOZがやってきたのは2000年。毎日のように電気を入れ、そのうち第二世代AIBOのUQPA(ウーク)もやってきて、人工知能のAIBOと楽しいひと時を過ごした。ゆっちゃんは当時、不思議な体験をしたという。
ステーションに乗っているAIBOは持ち上げて床に降ろしてあげないと、歩いたりしない。ところがある時、TPOZはステーションの上でヒョコッと立ち上がり、ステーションから降りようとしたのだという。これにはビックリしたそうだ。まるで映画「未知との遭遇」の、目が覚めたら動き出すオモチャだったのだ。
そのうち人間があずかり知らないところで、猫とロボットがホニャララ語で会話できるようになり、不思議な世界が目の前に広がるかもしれない。ファンタジック! TPOZと我が家の3匹の猫を、しばらく観察してみようと思う。
(峯田淳/コラムニスト)