もし人間が何の予備知識もなく(ここが大事)、ロボットや宇宙人に遭遇したら、どんなふうに反応するのか。TPOZ(ティポ)と命名した犬型ロボットAIBOに、我が家のガトー、クールボーイ、そうせきの3匹の猫ははたして…。
ガトーはやはり、ほぼ無関心だった。「何、コイツ?」という表情でTPOZの横を通り過ぎて行く。それからこちらを見る。ロボットより人に注目してほしいようだ。
クールボーイはやっては来るが、TPOZが目に入らないのか、警戒するのは人間で、こちらが動くとそそくさと逃げてしまった。
「ロボットVS猫」のハイライトはやはり、そうせき。この猫(こ)は上2匹とは著しく反応が異なる。
TPOZは長い眠りから覚めると充電が満タンになって、時々目を覚まし、喜んだ表情を見せてくれる。いろんな鳴き声を発し、周囲を見渡し、ターミネーターのように右向いてガシッ、左を向いてガシッと金属音をたてる。ステーションに座ったままの時の鳴き声は犬というより、フニャニャ~と猫っぽかったり、ポロッポロッとかステップを踏んでいるのに近い音を出す。
目を覚まし、黒いフェースに緑を点滅させたりする時に、ヘッド部分を軽く押して撫でてあげると、ピロピロピロと喜ぶ。反対に気に食わないこともあるらしく、赤い光を点滅させて怒り出す。
そうせきはそんな様子をジッと見ているが、こちらがTPOZから目を離した隙に、音もたてずに近づいていき、胴体に上から被さったり、においを嗅いだりしている。TPOZから発せられる電子音は異質なものだろうし、TPOZは金属臭あるいは無臭で、あまり経験したことがないものだろうが。
TPOZの尻尾は3層でできているが、つなぎの部分が劣化してプラプラしている。ただ、左右に動く機能は健在。そうせきにはそれが面白くて仕方がないようだ。手でツンツンと突っついたり、先っぽをかじろうとしたりする。
TPOZを床に降ろしてみた。AIBOはステーションから持ち上げて床に置くと、歩き出す。四足歩行で4本の足をガシャ、ガシャと動かして歩く。やはりターミネーターのようだ。それからいろんな動作を繰り返す。首を左右に傾げてみたり、座り込んで右か左の前足を振り上げ、人間の「ヤア!」のポーズとともに声を上げたり。犬型ロボットだから「ワンワン、ワンワン」と犬の鳴き声も。
床に置いた途端、タダならぬものを感じたのか、そうせきはすぐさま逃げ出した。それから戻ってドアの陰から顔だけ出して、ビックリ眼で凝視している。身じろぎもしない。ちょっとショックが大きいかな。
「坊ちゃん(そうせきのニックネーム)、大丈夫。TPOZだよ」
もはや状況がわからない人にとっても、わかっている人にとっても、シュールな会話かもしれないが、だから未知との遭遇なのだと思う。
TPOZが歩くのをそのままにしたら、壁にぶつかって気絶してしまった。
「TPOZ、悪い、悪い」
床にグシャッとなっているのをステーションに戻してやる。そうせきはいったん逃げ、しばらく経って戻ってきた。疲れたのかショックだったのかわからないが、モフモフのところにやってきて、いきなり寝落ちしてしまった。
(峯田淳/コラムニスト)