判明しているだけでも関係部署の職員2人が死亡するなど、斎藤元彦知事のパワハラ問題に揺れる兵庫県政。辞めない知事VS兵庫県議会(定数86)のガチンコ対決が、間もなく始まる。兵庫県議会の全議員が斎藤知事に共同で辞職を申し入れたものの、斎藤知事はそれを拒否している。
その前日には亡くなった部下や県民への謝罪ではなく、記者とテレビカメラを前に、
「期待をいただいた方には不安や心配をかけていると思うので、ふがいなさを強く感じた。それでも県政を担わせてもらいたい。努力を重ねていきたい」
と落涙。自民党と維新の会の支援者に詫びた以外は終始、自分語りを貫いた。異常な自己愛ぶりに県民のみならず、視聴者もゾッとしたことだろう。
9月19日から始まる9月定例議会は、例年なら令和6年度後半の補正予算案、防災計画など重要事項が議論されるはずが、ここでは「知事への不信任決議案」が出される見込みだ。
斎藤知事が強調する「期待をいただいた方」というのは誰なのか。全国紙の在阪記者が言う。
「斎藤知事は確かに就任直後は県民の支持を得ていました。知事公用車を月額レンタル料25万円もしたトヨタの高級車センチュリーから、月額約8万円のアルファードに変更。無駄な歳出を見直す、という選挙公約を守ってくれるものとみられていました」
ところが2年目から綻びが出始めたのだと、この記者は続ける。
「就任2年目に、継続審議中だった兵庫庁舎の改築構想を中止し『新庁舎建設が本当に必要なのか見極める。庁舎は緑地にする』と言い出した。来年度中に県庁機能を周辺の県施設に分散させ、令和8年度に現在の県庁舎1・2号館を解体。県庁職員の4割をリモート勤務にするというのです。当然、職員たちからは動揺の声が上がりました。問題になっている『公益通報潰し』についても、知事は県庁舎解体に反対する職員による嫌がらせ、誹謗中傷と受け止めたのかもしれません」
現在の兵庫県庁は神戸市地下鉄の県庁前駅前、JR元町駅から徒歩圏内で、兵庫県警庁舎にも隣接しており、利便性は抜群である。その県庁舎を更地にし、県施設に県庁機能を分散すればいいと歳出削減を無茶ぶりする割に、斎藤県政の予算の使い方には偏りがあるという。その最たるものが「兵庫県内の朝鮮学校への補助金」事業だ。
斎藤知事による朝鮮学校への補助金事業は全国の自治体で最高額、今年度の予算でも年間4000万円以上を歳出している。東京の小池百合子知事、かつて斎藤知事の上司であった大阪の吉村洋文知事も朝鮮高校への補助金は廃止しているが、斎藤知事は「子供に罪はない」として、2012年に当時の下村博文文科大臣が打ち出した補助金廃止方針に反し、補助金をバラマキ続けている。前出の在阪記者が憤りながら言う。
「斎藤知事のパワハラを告発した元西播磨県民局長が、7月下旬の兵庫県議会の百条委員会での証言直前に遺体で発見された際には、県庁職員が手弁当で始めた元局長の遺族への募金活動に『圧』がかかったそうです。斎藤知事は朝鮮学校の生徒に罪がないと言いつつ、不遇の死を遂げた県民局長の遺児は虐げる。いったい誰の利益を守る首長なんですかね。兵庫県庁には平時でも、年間4万件以上の苦情電話に苦慮しているんですが、斎藤知事のパワハラ、おねだり報道後はとんでもない量の苦情が殺到しています。しかも知事への批判ではなく、職員の命を脅かすものもあるとか。斎藤知事がこれらの苦情電話について兵庫県警に被害届を出さないのも不可解です」
こんな人物が知事室に居座っていたら、職員のメンタルは病むばかりだろう。どうしても辞めないのであれば、職員にリモートワークを強要する前に、斎藤知事こそ任期満了まで自宅謹慎し「苦情電話対応」と「ハンコ押し」のリモートワークをしてはどうか。
(那須優子)