9月27日に投開票が行われ、事実上、次の総理大臣が決まる自民党総裁選まで1週間あまりとなる中、立候補者9人による地方遊説が名古屋を皮切りにスタートしている。
今回の立候補者の中で、女性候補は高市早苗経済安全保障相と上川陽子外相の2人だが、上川外相で思い出すのは、今年5月に物議を醸した「うまずして何が女性か」発言だろう。
これは5月18日、上川氏が地元の静岡県静岡市で女性支持者らを前に、県知事選の応援演説を行った際の言葉だ。
「この方(候補者)を私たち女性がうまずして、何が女性でしょうか」
共同通信社をはじめ、朝日新聞、毎日新聞が「生まずして何が女性か」発言を大々的に報道したことで、「子供を産めない女性は女性でないというのか」「産むか産まないかは国民の自由だ」といった反論が続出。立憲民主党の蓮舫参院議員はXで〈産む産まない、結婚する、しない。別姓を主張する。どれも「ワガママ」という時代を終わりにしたいのに、総理候補と言われる方がこの発言。もう、やめてほしい。本当に痛い〉と噛みつくなど、永田町を揺るがす大騒動になったのである。
しかしこの発言、前後の文脈を見れば「私たち女性が(知事を)うまずして(当選させずして)何が女性か」との解釈が妥当。さすがに「子供を産まずして何が女性か」と解釈するには無理がある。
結局、共同通信は当初配信した「産まずして」の表記を「うまずして」に訂正。とはいえ、当然のことながら、野党側からの批判は止まらない。翌19日、上川氏は発言を撤回したが、21日には参議院外交防衛委員会で、立憲民主党の小西洋之氏から「発言の根っこには『子供を産まずして何が女性か』という誤った偏見や価値観があるのではないか」と執拗に畳みかけられる。上川氏の弁明はこうだ。
「人生観としても私の思いとしても、まったくない。しかし、そのような意味で受け取られる可能性について指摘があったことは、真摯に受け止めなければいけない。そういう思いで撤回した」
全国紙政治部記者が言う。
「上川氏はオウム事件で死刑判決を受けた教団幹部13人の死刑を執行した法務大臣として知られてはいたものの、外務大臣に就任後はさしたる話題がなかった。そんな中、今年1月に麻生太郎副総裁が『ほぅ~、このおばさん、やるね』と発言したことで一躍、脚光を浴びることになりました。その後、マスコミが小さな集会にまで取材に足を運ぶように。麻生氏がどこまで計算していたかはわかりませんが、『うまずして』騒動も記者たちにとっては棚ボタの談話でした。結局、上川氏の注目度を上げた最大の功労者は麻生氏だった、ということかもしれません」
そんな麻生氏「お墨付き」の人物の総裁選の勝算はいかほどか。
(山川敦司)