〝安打製造機〟として国内、メジャーで活躍した、ヤクルト・青木宣親の今シーズン限りでの引退に際して、様々な労いの声が上がっている。
そんな中、選手、そしてコーチとして関わった野球解説者の宮本慎也氏が、9月16日に更新した自身の公式YouTubeチャンネル「解体慎書」でその思いを語った。
実は2人は、かつて不仲説をウワサされたことがあった。その発端と言われているのが、2009年だ。CS進出を懸けた戦いが続く中、打撃成績が下降気味の青木が、とある外野守備の怠慢プレーを当時の飯田哲也外野守備・走塁コーチに指摘され、口論になったのだ。
周りに促されて、その仲裁に入った宮本氏に対しても青木が反抗的な態度をしてしまったのがその真相のようだが、名門校の中では上下関係に特に厳しいといわれるPL学園出身の宮本氏だけに、その怒りは想像に難くない。しかし、今となってはそれも笑い話のようだが…。
YouTubeチャンネルで宮本氏は「(自分の)引退試合の時に(青木が)見に来てくれて、それで食事に行って、まぁあの時の話もしたんですけど。彼も成績もあげていて、実績もあげていたので『尖っていた部分があった』と言ってましたけど、僕もチームで上の立場だったので、立場の違いでぶつかった」と当時を回顧した。
さらに宮本氏はどっちもどっちだったとしながらも、自分がもう少し広い心で接してあげればよかったと語っている。
そして、青木の結婚式に宮本氏が出席しなかったのはその確執からだと週刊誌に書かれた点については、先に友人の結婚式の予定が決まっていたためだと説明。きちんと祝儀を渡したと語り「もし嫌いだったとしても普通行くでしょ」と笑った。
さらに宮本氏は、青木が変化したタイミングとして、自身がヤクルトのヘッドコーチに就任した2018年シーズン、MLBからにヤクルトに復帰した時を挙げている。
「前の年に96敗してて大きい戦力補強がない中、彼が戻ってきたことでマスコミが来るし、キャンプがにぎわうんですよね。そうなると(チームの)雰囲気もよくなるし、彼自身も大人になったというと言い方が悪いかもしれないけど、チームのことをよく考えて行動してくれた」と当時を述懐した。
その背中を見せて若手の手本となった点や、青木の打順を2番に固定できたことがシーズンの2位躍進に貢献したと、コーチの視点で評価している。
今年に入って一度、球場で「年取って衰えていくのと戦うことを楽しんだ方がいいよ」とアドバイスしたという宮本氏だが、一方で今季で引退を決断した青木の潔さに理解を示した。
宮本氏の決して歯切れのいいとは言えない青木評は当時のバチバチぶりを容易に想像させるが、青木の引退会見で村上宗隆が涙する姿は、宮本氏が青木に伝えたかったことが結実した出来事、という見方ができないだろうか。
(カタタキケン)