「これが最後だというから、最後ぐらいは当選させてあげたい」と語る自民党支持者がいるという石破茂氏は総裁選において、党員からの支持は抜群だ。ところが党内での支持率、議員の間での人気がやたらと低いのはなにゆえか。まさかの「裏切り者」まで出たその足元に転がっていたのは、人間関係構築の難しさだった。(2024年8月18日配信)
メディアの世論調査では「次の総理大臣」として、常に上位に名前が挙がる自民党の石破茂氏だが、岸田文雄総理の総裁選への不出馬表明を受けて、8月14日に訪問先の台北で、
「総裁選に推してやろうという方々が20人おられれば出馬したい」
と明言した。いまだに立候補に必要な推薦人20人を集めていないことを自ら認めてしまった形だ。
FNNの世論調査「次の総理にふさわしい人」では、石破氏がトップで24.7%と、2位の小泉進次郎元環境相の12.1%、3位の高市早苗経済安全保障担当相の7.5%を大きく引き離している。
元NHK記者でジャーナリストの岩田明子氏は、石破氏が党内で不人気な理由について、次のように説明した。
「支える人たちが最初、派閥でいましたけれども、1人ずつ抜けていったことから分かるように、人間関係で引き付けておくための包容力というか面倒見の良さ、そういうところなのかなと思う」
石破氏は自身に近い議員らと「水月会」というグループを結成したが、次々と議員が退会した。有力メンバーだった斎藤健経産相もそのひとりだ。斎藤氏は今回、石破氏を推すどころか、自身が総裁選への出馬に意欲を示した。
そんな「裏切り者」もいる石破氏は「日本の安全保障を考える超党派議員」の代表として訪台したが、さる自民党の閣僚経験者が言うには、
「総裁選前ならば超党派ではなく、自民党の中堅・若手議員を引き連れて行くべきだった。それができないのは岩田さんが指摘するように、包容力のなさ、面倒見の悪さが原因だ」
いくら世論調査で上位にいても、立候補に必要な推薦人20人の壁が、石破氏にはついて回る。政権批判では歯切れがいい石破氏だが、自身の対応については「出馬する」とはすぐに断言できなかった。
その後、石破氏は「メドはつきつつある」と語ったが、前回2021年の総裁選で出馬断念に追い込まれた悪夢がよぎっていたのではないだろうか。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)