京都市が長年直面している深刻な課題のひとつに、オーバーツーリズムがある。観光客の急増による公共交通機関の混雑が、特に市民の日常生活に影響を与えているのだ。
住民がバスに乗れないなどの不便を解消するため、京都市は今年6月、観光客専用の「観光特急バス」の運行を開始した。これにより、観光客と市民の利用路線が分離され、混雑が緩和されたという声が聞かれる。
京都市内で飲食店を営む男性は、インバウンドによる「被害」をこう語る。
「インバウンドが増えるたびに、地元の商売の状況は悪化しています。地元の人たちが店を手放すと、外資系が買い取って観光客向けの店を開くんです。その結果、地元の飲食店にはお金が回らず、税金はインフラや公共施設の維持に使われるばかりです」
外資系の参入が地元経済に与える悪影響のみならず、観光客とのトラブルや、観光業の恩恵が地元の人々に直接届かないことへの不満を訴える声は少なくない。
さらに、外国人観光客が長時間にわたって飲食店に滞在し、店側とのトラブルが頻発していると、飲食店を経営するこの男性は指摘する。
「特に中国人観光客の中にはマナーが悪い人がいて、後片付けやトイレ掃除の手間を考えると、とても歓迎したいとは思えません」
インバウンドによる悪影響は、医療機関にも及んでいる。京都市内に住む女性が明かす。
「昨年10月、母が体調を崩して救急車を呼んだのですが、病室は空いているにもかかわらず、海外からの急患対応に時間と人手が取られていて、入院できないと言われました。毎月の通院でも外国人観光客が優先され、地元の患者が長時間、待たされることが増えています」
観光業の恩恵を受ける一方で、地元住民や商業者にとっては、観光客の急増が新たな負担を生んでいる現状が浮き彫りになった。京都市では今後、観光振興と住民生活のバランスをどう取るかが課題となっている。
(京野歩夢)