サッカーのEFLチャンピオンズシップ(イングランド2部)で大暴れしている日本人プレーヤーがいる。今夏、海を渡ってブラックバーン・ロヴァーズに所属するFW大橋祐紀だ。
大橋が圧巻だったのは、9月14日に行われた第5節ブリストル・シティ戦でのこと。
後半10分にブラックバーンがカウンターを仕掛け、MFティリス・ドーランが敵陣までボールを運ぶと、ペナルティエリアの手前で左サイドでフリーの大橋にパス。迷うことなくダイレクトでシュートを放つと、ゴール右隅に豪快に突き刺さった。
さらに、後半25分に今度は右サイドのゴール前付近でボールを受けると、相手DFをワンフェイントでかわして中央にカットイン。左足から放たれたボールは弧を描きながら左隅のサイドネットに吸い込まれた。
これでリーグ戦とカップ戦合わせて、公式戦7試合で5ゴール。28歳の遅咲きのストライカーは飛ぶ鳥を落とす勢いでゴールを量産している。
大橋のプレーの特徴について、欧州に詳しいサッカーライターがこう話す。
「ブリストル・シティ戦では両足で力強いシュートでゴールを決めていますが、ヘディングで合わせるのも上手いんです。181センチの身長は海外では大きくありませんが、ポストプレーに強く、前線から献身的なハードワークで汗をかけるのはかなり魅力的ですね」
だが、海外移籍の夢を叶えた大橋のプロ生活は苦難の連続だった。中央大学を卒業後、2019年にJ1ベルマーレ平塚に入団。
デビュー1年目から活躍が期待されたが、第9節のサガン鳥栖戦で右足前十字靭帯損傷、外側側副靭帯損傷、大腿二頭筋損傷で全治8カ月の大ケガを負った。
負の連鎖は続き、翌年3月のトレーニングマッチで負傷し、右反復性肩関節脱臼で全治5カ月。同年8月にはトレーニング中にケガをして、左鎖骨骨折で全治3カ月の診断が下され、プロ生活はリハビリに時間を費やされた。まさに「ケガのデパート」だった。
そんな治ってはケガを繰り返した大器晩成が花開いたのは、23年シーズンのこと。
開幕戦の鳥栖戦でハットトリックを達成するなど、リーグ戦23試合で13ゴールを記録。その活躍が認められ、今年1月にサンフレッチェ広島に加入すると、エースとして11ゴールを奪い、リーグ4位タイの得点数をマークした。
「ノリノリの無双状態で手がつけられない感じでした。ですが、広島の優勝争いの真っ最中にブラックバーンからオファーが届きました。大橋にとって年齢的に海外移籍はラストチャンスになる可能性が高く、加入の半年で広島を離れることを決断したのです。現地メディアでは、日本での実績しかない大橋に懐疑的な報道が出ていましたが、すぐに結果で黙らせたということです」(前出・サッカーライター)
昨シーズンのブラックバーンは絶不調で最後まで3部への降格争いを味わっていた。今季は〝救世主〟の登場で、首位のウェストブロミッジ・アルビオンと勝ち点2差の3位と、好調をキープしている。
このままゴールを重ねてチームを1部へ導くようなことがあれば、この「不屈の男」が日本代表に初選出される可能性はある。大橋が旋風を巻き起こす日を見てみたいサッカーファンは多いことだろう。
(風吹啓太)