9月17日、サッカーのアジア最強のクラブを決めるAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)が開幕した。
今シーズンから大会フォーマットが変わり、優勝賞金は約6億円から約14億円に大幅に増額されたことで注目される中、日本勢で最初に登場したのが前年のAFCチャンピオンズリーグで準優勝した横浜F・マリノス。
リベンジに燃える初戦は韓国Kリーグ1の光州FCとの対戦することになったわけだが、3-7という「まさか」のまるで野球のようなスコアで衝撃的な大敗を喫した。
「会場の光州ワールドカップスタジアムは、7月に歌手のPSYが『びしょびしょショー』公演を行い、大量の水が使用された影響で芝のコンディションは最悪と言われていました。実際、横浜の選手は劣悪な芝生に足を取られて苦戦していましたが、それ以前にMFヤシル・アサニにハットトリックされるなど、試合内容で圧倒されましたね」(スポーツ紙記者)
J1優勝5回の名門にとって屈辱的だったのは、光州FCはアジア最高峰の大会に初参加の〝新参者〟であり、2010年に創設された地方自治体が運営する「市民クラブ」だ。
13年にKリーグが2部制になってから昇格と降格を繰り返し、16-17年シーズンにはヴィッセル神戸でプレー経験のあるMF和田倫季が所属していたことがあった。
22年にKリーグ2で優勝すると、翌23年にはKリーグ1でも猛威を振るい、3位でACLEの出場を決めている。勢いで言うなら〝Kリーグの町田ゼルビア〟といったところか。
しかし、台所事情は町田とは180度違う。大舞台に向けて新戦力の補強をしたいところだったが、思わぬピンチが訪れたのだ。韓国事情に詳しいスポーツライターが説明する。
「今年から本格的に導入した財政健全化制度に違反したため、選手登録禁止措置が下され、今夏の移籍市場で補強することができませんでした。そのうえ、若手のアタッカーで韓国代表のFWオム・チソンがEFLチャンピオンシップ(イングランド2部)に移籍。大きく戦力ダウンした状態で今シーズンを戦っています」
そんな苦境の中だが、22年に就任し強豪チームに生まれ変わらせたイ・ジョンヒョ監督の存在が大きかったという。前出のスポーツライターがこう話す。
「繊細でスピーディーなパスサッカーを軸に、自分たちのフォーメーションを崩してでも相手の弱点を徹底的につくサッカーで新風を巻き起こしました。今では韓国人の監督で右に出る者がいないと言われるほどの戦術家として恐れられています」
そして横浜もイ・ジョンヒョ監督に丸裸にされ、まんまと大量にゴールを奪われてしまったのだ。
初戦で特大インパクトを残し、今大会の台風の目に躍り出た光州FCだが、イ・ジョンヒョ監督にはさらなる野望があった。
「近い将来、Jリーグのクラブの監督になりたいと売り込んでいます。横浜に自分の練った戦術が通用したことでますます自信を深めたのではないでしょうか。Jリーグで結果を出した後は、欧州での監督を視野に入れていて野心家としての注目度が高いのです」(前出・スポーツライター)
第2節で川崎フロンターレ、第4節でヴィッセル神戸との対戦が控えている。日本勢の3連続大敗だけは絶対に阻止したいところだ。
(風吹啓太)