注目のドラマ「極悪女王」(Netflix)が9月19日に配信を開始した。ゆりやんレトリィバァが主演を務め、唐田えりかと剛力彩芽が脇を固めるなど、そのキャスト陣は早くから話題となっていた。
が、なにより目を引いたのは、バブル期真っ只中に活躍した悪役女子プロレスラー・ダンプ松本の物語であることだった。ダンプの往時を知るメディア関係者はこう語っている。
「ダンプが所属した全日本女子プロレス(全女)は、前座には『台本ナシ』の真剣勝負をさせ、関係者が新人レスラーの勝敗に金を賭けていたと言われるほどのブラック団体でした。先輩レスラーによるシゴキは理不尽の極みで、イジメ同然の状態。レスラー同士が口をきかないほど仲が悪いのは当たり前でした。そうした表には出せなかった内情も、ドラマでは徹底的に描かれ、正統派レスラーを目指した松本香が『極悪同盟』の首領であるダンプ松本に変貌していく姿が再現されているのです」
そのダンプの名が全国で一気に広まったのは、人気絶頂だった同期のベビーフェイスコンビ「クラッシュギャルズ」(長与千種・ライオネス飛鳥)との抗争だった。
正統派ヒロインを凶器攻撃でコテンパンにする姿に観客は怒り、一部のファンがダンプの実家に押しかけたのは序の口。ダンプの愛車は破壊され、驚くべきことに、ダンプを殺そうとするストーカーまで現れたという。
異常なほどに嫌われたダンプは「日本一殺したい人間」とまで呼ばれ、長与との2度にわたる「髪切りデスマッチ」は今も語り継がれる伝説となっている。
「全女の松永高司会長が長与・飛鳥とダンプの双方に、相手方からの悪口というテイでウソを吹き込んで、対立の火に油を注いでいたそうです。ダンプはそれで『仲がよかった同期なのに、なぜ…』と長与を憎み、リングに凶器として本物のドスを持ち込もうとしたこともあったとか」(プロレス誌編集者)
さすがにドスを持ち込む前にテレビ局スタッフに見つかり、「中継できなくなるから」と必死に止められたという。
有名になり、巨額のギャラが舞い込んだダンプは、母に一軒家をプレゼントした。だが前述したように「日本一の悪役」にはアンチが多く、母親からも「引退するまで実家には帰ってこないで」と言われていた。見つかったらご近所との関係が悪くなるかもしれない。身内からそんな心配をされるほど、ダンプの悪評はすさまじかったのだ。
「ただ、リングから降りれば後輩の悩みに寄り添い、親身になって相談に乗る、よき先輩でもありました。ヒールを完全に演じ切っていたダンプは、本当はイジメやシゴキを一切やらない、涙もろく優しい人柄だったのです。でも『実はいい人』と女子プロファンに知られるべきではないと考えており、現役晩年までサインや握手は絶対にしなかった」(前出・プロレス誌編集者)
話題のドラマはダンプの苦悩まで忠実に描いているのだろうか。