10月に行われる26年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選に向けて調子を上げたい韓国だが、所属クラブで「大黒柱」が苦戦していた。
日本代表は欧州クラブに所属する選手が約9割を占めているが、韓国の場合は9月に招集された27名のメンバーのうち「欧州組」は9名。とはいえ、欧州組のクラブでのパフォーマンスが代表での動きに直結すると言っていい。
ところが、ゴールが近いようで遠いのが、韓国代表の大エースでプレミアリーグ(イングランド)のトッテナムに所属するFWソン・フンミンだ。
第5節を終了した時点で、全試合で先発フル出場を果たしているが、得点は第2節のエヴァートン戦で奪った2点だけ。4試合でノーゴールとあきらかにイマイチなのだ。
欧州に詳しいサッカーライターが実情を分析する。
「今季は好不調の波が激しくシュートの本数が激減すると、得意のドリブル突破で消極的な姿勢が目立つようになり、かつてのような〝怖い存在〟ではなくなってしまった。トッテナムとの契約は今季までですが、クラブ側が32歳のFWに衰えを感じているのか、契約延長の話が聞こえてきません」
だが、9月に行われたアジア最終予選の2試合では「戦術はソン・フンミン」と揶揄されるほど、大エースの個の力に頼りっぱなしだったのが韓国代表だ。このままでは10月に行われる勝ち点4で並ぶヨルダンとイラク戦に暗雲が垂れ込めることになりそうだ。
そんなソン・フンミンを支える〝相棒〟のFWファン・ヒチャンも苦境に立たされていた。
ウルヴァーハンプトン・ワンダラーズ(イングランド)で、昨シーズンにリーグ戦29試合に出場し12得点を記録したが、今季はスタートダッシュでつまずいた。前出のサッカーライターが解説する。
「一緒に攻撃の核を担っていたポルトガル代表のFWペドロ・ネトがチェルシー(イングランド)に移籍したことで、ファン・ヒチャンに寄せられる期待はとても大きかったんです。しかし、開幕から4試合に出場して得点ゼロ。そればかりか、シュートを1本も打っていません。まさに深刻なスランプに陥っていて、出番が激減しています」
チームは4敗1分と最下位に沈み、すでに戦犯扱いされている。
心配なのは攻撃陣だけではない。ドイツのバイエルン・ミュンヘンに所属するDFキム・ミンジェはメディアから容赦ない集中砲火を浴びていた。
23年7月にアジア人歴代最高額の移籍金となる5000万ユーロ(約80億円)で加入したが、1年目から凡ミスを連発。それだけに今季からヴァンサン・コンパニ監督が新指揮官に就任したことで、序列は最後尾まで下がったとみられていた。
しかし、日本代表のDF伊藤洋輝がケガで離脱し、オランダ代表のDFデ・リフトが開幕直前にマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)に移籍したことで、棚ぼたでレギュラーに復帰すると、開幕から先発出場してバイエルンの4試合全勝に貢献している。それでも、
「9月17日に開催されたチャンピオンズリーグのディナモ・ザグレブ戦は9-2という歴史的大勝でしたが、2失点はキム・ミンジェのせいだとメディアはやり玉にあげて、低評価を付けています。また、ドイツ代表のレジェンドでクラブOBのローター・マテウス氏は毎回のようにキムに対してボロクソで、第1節のヴォルフスブルク戦で失点に絡むミスをしたときは『安全性があって、素早いパスゲームの能力を兼ね備えていない。私は最初からそういう部分が好きではなかった』と、いち早く酷評していましたね」(前出・サッカーライター)
体力的衰えやクラブでのメンタル面への口撃、これらが尾を引きこのまま攻守の「大黒柱」が共倒れすることを懸念する声は少なくない。
W杯10大会連続11回出場の記録が途絶える…そんな危機が現実のものとなりつつある。
(風吹啓太)