圧勝で2連勝の日本代表とは明暗くっきりの強豪国だらけだ。
2026年のサッカーの北中米ワールドカップ(W杯)のアジア最終予選は、同じグループCでライバルのサウジアラビアとオーストラリアがスタートダッシュに失敗しているが、波乱の流れは、グループBに入った韓国にも及んでいる。これが実に何だか嫌な空気が漂っているのだ。
9月5日にホームでパレスチナを迎えた一戦では、FWソン・フンミン(トッテナム)、DFキム・ミンジェ(バイエルン)、MFイ・ガンイン(パリ・サンジェルマン)の豪華メンバーがそろい踏み。
しかし、FIFAランキングで圧倒的に上の23位韓国は、96位のパレスチナの強固な守備に苦しめられ、なんと0-0のスコアレスドロー。勝ち点はまさかの「1」しか取れなかった。初戦というプレッシャーだけではなく、この体たらくの原因は、難航した監督人事が影響したとみられている。
24年2月にユルゲン・クリンスマン監督を解任して以降、新監督が決まらず、暫定監督に代表チームを任せていた。
このままアジア最終予選まで決まらないのでは…と思われたやさきの7月、Jリーグの活躍でもおなじみのホン・ミョンボ氏が10年ぶりに代表監督に復帰就任することが決まった。
しかし、ホン氏は首位争いをしていた韓国の蔚山HDの監督を務めていて、代表監督就任の噂を「興味がない」とバッサリ。それにもかかわらず急転直下、チームを見捨てて韓国代表を選んだことで「ウソつき」のレッテルを貼られていた。
「初陣となったパレスチナ戦ですが、一部のファンはまだ許していなかった。試合前にホン・ミョンボ監督の名前が呼ばれただけでブーイングが起きただけでなく、試合中に電光掲示板に監督の顔が映ると再びブーイングが鳴り、まったくホームの雰囲気ではありませんでした。しかもスコアレスドローだったことが火に油を注ぎ、試合後は6万人近くの観客席から大ブーイングが響き渡りましたね。あまりの騒動にキム・ミンジェが憤怒の表情でスタンドに近づき、サポーターに抗議のジェスチャーをしたほどです」(サッカーライター)
新体制が始まったばかりにもかかわらず、一部の韓国メディアは2戦目のオマーンとの結果次第で「更迭論が浮上」と報じ、厳しい目を向けていた。
そんな中、9月10日の敵地でのオマーンとの試合は、前半終了間際に同点に追いつかれたものの、エースのソン・フンミンが後半の終盤に決勝ゴールを奪い、初勝利を飾っている。
これでいい流れが作れると思いきや、試合後に再び不穏な空気が流れる。
「オマーンの1点は、韓国のDFチョン・スンヒョンの頭に当たったボールがオウンゴールとなりました。SNSやオンラインコミュニティで非難する書き込みで炎上すると、それだけでは怒りが収まらず、今度はチョン・スンヒョンの妻のアカウントを探し出し、見るに堪えない誹謗中傷や引退勧告までするアンチコメントが殺到。この〝ネチズン〟の攻撃性が韓国国内で問題視されています」(前出・サッカーライター)
今回、韓国のグループBは、イラク、ヨルダン、オマーン、パレスチナ、クウェートと全て中東勢の異例の組み合わせだ。
アウェーの移動距離だけで計6万190キロという過酷すぎるスケジュールだが、韓国代表にとってはもはや「ホーム」すら安息の地ではないのだ。
(風吹啓太)