自民党・石破茂新総裁の体制がスタートする。石破氏と対立した安倍晋三元首相が率いた旧安倍派から執行部に起用されたのは、福田達夫幹事長代行ただひとりだった。しかも福田氏はいわゆる「裏金問題」に引っかかっているにもかかわらず、だ。
福田氏が所属した旧安倍派の多くの議員は、安倍元首相と石破氏が敵対関係にあったことをよく知っており、決選投票では高市早苗氏に投票した。福田氏に対し、旧安倍派からは、
「石破陣営に乗り換えたのではないか。まさにユダだ」(中堅議員)
と非難する声が出ている。
衆院群馬4区選出の福田氏は、自身が代表を務める資金管理団体が、派閥側からの収入98万円を記載しなかった。福田氏は今年2月に訂正した際に「細心の注意を払うべき政治資金に関する不備があり、管理監督が不十分だった」とコメントしている。
石破氏が人事で旧安倍派を軒並み外す中で、福田氏が幹事長代行に抜擢されたのは、幹事長となる森山裕氏の意向とみられる。福田氏は総務会長時代、森山氏に総務会長代行となるよう依頼するなど、両者の結びつきは深いからだ。
福田氏は総裁選では小林鷹之氏を推したが、決選投票では石破氏に投票したとみられている。小林陣営関係者によると、福田氏は小泉氏が残っても石破氏に投票する意向だったとして、次のように明かすのだ。
「小泉氏ではなく石破氏に入れるという話を聞いて驚きました。父親の小泉純一郎元首相と福田康夫元首相が首相と官房長官のコンビだったことから、小泉氏も自らが出馬すれば福田氏が応援してくれると思っていた。それが福田氏は小林氏を選んだだけでなく、決選投票でも石破氏を選んだのですから」
まさに「二重の裏切り」となった福田氏。小泉氏が当選していれば43歳で、57歳の福田氏より若く、世代交代が進んでしまうことを危惧したかもしれないが、高市氏ではなく石破氏を選んだことで、さらに驚きが広がっている。
「福田さんは安倍さんの子分というより、福田元首相の息子。対中強硬派で首相になっても靖国神社を参拝するという、高市さんの姿勢を警戒したのかもしれません。それよりも幹事長代行になったことで、いかにもポストに釣られた印象が強い」
先の中堅議員はそう言って、批判するのだった。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)