自民党・石破茂新総裁は党役員人事で、党運営の要である幹事長を、決選投票で逆転勝ちした高市早苗前経済安全保障担当相ではなく、選挙対策委員長務をめ、野党とのパイプもある森山裕前総務会長にしたことで、党内保守派からの反発を招いている。
2012年の総裁選で逆転負けを喫した石破氏を、総裁になった安倍晋三元総理が幹事長で処遇したのは大違いだ。岸田文雄前総裁は決選投票後に「これからはノーサイド」と党内結束を呼び掛けたが、石破氏と党内保守派との対立は強まりそうだ。
政治ジャーナリストの田﨑史郎氏は9月28日の日本テレビ系番組で、高市氏の幹事長起用を提案した。
「石破さんの課題は、来年の衆院選と参院選に勝つこと。そのためには、保守派を取り込むことが必要だ。そのために、思い切って高市早苗さんを幹事長にするのがいちばんいいと思います」
その理由は次のようなものだった。
「安倍政権ができた時、(安倍氏は)石破さんを幹事長にした。自分と戦った相手を起用することで、党内を固めていく。そういう工夫をすべきだと思います」
2012年の総裁選では、1回目の投票で石破氏が1位、安倍氏が2位だったが、国会議員票の比重が高い決選投票では安倍氏が逆転し、総裁再登板を果たした。
今回、1回目の投票で高市氏は国会議員票72、党員票109票の181票。石破氏は国会議員票46、党員票108票と、いずれも高市氏が上回った。党員票で高市氏は東京、大阪、福岡、宮城など人口の多い都府県で勝利。このため、高市陣営は「幹事長以外は受けない。そうでないと、石破氏に連帯責任を負わされてしまう」として、高市氏も打診のあった総務会長就任を固辞した。
石破氏にしてみれば、岸田文雄前総理と幹事長だった茂木敏充氏の連携が悪かったことから、高市氏よりも意思疎通を図りやすい森山氏を選んだ。森山氏は安定感があることで知られてはいるが、保守派からは「あまりにも親中派すぎる」との批判がある。
これまで石破氏は党内で「後ろから鉄砲玉を撃つ男」として知られていたが、高市氏をはじめ保守系の取り込みをしなかったことで、今後は「後ろから鉄砲玉を撃たれる男」になりそうだ。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)