東京五輪誘致で「おもてなし」を世界にアピールした小泉進次郎夫人の滝川クリステルに、ぜひこれを教えてあげたい。将棋ファン、観光客に垂涎ものの「藤井聡太おもてなしブック」が完成したのだ。
これを作成したのは福井県あわら市で、10月19日から将棋の8大タイトル「第37期竜王戦第2局」が開催される地だ。
そこで藤井聡太竜王と、挑戦者で新進気鋭の佐々木勇気八段に提供する「勝負めし」「勝負おやつ」「勝負ドリンク」の候補メニュー計38品を紹介したメニューブックをまとめ、あわら市の公式サイトで公開中なのである。
対局に向けて用意されているのは、北陸の海の幸をふんだんに使った「海鮮弁当」や「大人のお子様ランチ」、甘エビカレー、鯖カレーのほか、藤井七冠の好物パイナップルをさっぱりした白あんで包んだパイナップル大福、地鶏のプリンパフェ、地元産とみつ金時芋と抹茶のモンブランパフェなど。これらメニューブックに掲載された「勝負めし」「勝負おやつ」は今年12月31日までの期間限定で、あわら市内で食べることができる。
あわら市は第2局開催までに観光、食べ歩きに便利な特設サイトも開設する予定だ(筆者注:数に限りがあるので、来店前に確認してほしい)。
8大タイトル戦で藤井七冠と挑戦者が選んだメニューは、日本将棋連盟のサイトやABEMA TVの将棋番組で紹介されるが、棋士に選ばれなかった全メニューリストを紙面で紹介するかどうかは、対局主催社である新聞社によって対応がまちまち。
棋士のために地元のシェフが創意工夫を施した「勝負めし」「勝負おやつ」を紹介しないのは報道機関としては実に不親切だし、藤井七冠が選んだ「勝負おやつ」は一時的にお取り寄せが殺到するものの、持続可能な「町おこし」「観光の目玉」として活用しきれていないのが現状だ。
今年の王位戦では、挑戦者の渡辺明九段がXに、自身が食べた「勝負めし」「勝負おやつ」以外のメニューリストをアップした。「ラーメン」からブランド牛の希少部位「シャトーブリアン丼」までバラエティーに富んだメニューが提供されたが、そのうち6品は王位戦後、期間限定で名古屋市内で提供された。
今年3月に北陸新幹線が福井まで延伸したものの、隣の石川県が元日の能登半島地震、9月の豪雨災害に見舞われ、お祭りムードは吹き飛んだ。秋の北陸路、あわら温泉で「勝負めし」に舌鼓を打ち、帰りに金沢でお土産を買うのは「被災地支援」になるだろう。
ホテルや老舗旅館が提供する「勝負めし」「勝負おやつ」も魅力的だが、判官贔屓の日本人の胃袋はその町、その店に行かないと食べられない「名物シェフ」考案メニューを食べたくなるようにできている。町ぐるみで竜王戦を盛り上げるあわら市の取り組みが、ぜひ全国の対局地に広がってほしいものだ。
(那須優子)