10月6日にスタートしたばかりのドラマ「若草物語―恋する姉妹と恋せぬ私―」(日本テレビ系)が、いきなり墓穴を掘ってしまった。局の信頼を失墜させた「セクシー田中さん」騒動を想起させるシーンが放送されたからだ。
この新ドラマは名作「若草物語」の舞台を現代の日本に置き換えて描かれる群像劇。脚本家志望だったものの、訳あって今はドラマ制作会社で助監督として働いている次女・町田涼(堀田真由)を中心に、四姉妹それぞれの幸せの形を追いかけていく。
物議を醸したシーンは、涼がひょんなことから、あるドラマの監督を任された際に登場した。そのドラマは恋愛と結婚こそが女性の幸せだと考えている大物脚本家・黒崎潤(生瀬勝久)が手がけたものだったが、涼が劇中のセリフを勝手に変えてしまったのだ。
黒崎が書いたもともとのストーリーでは、ある女性が男に騙されて傷ついているもうひとりの女性に「まだ若いんだし、もっと恋しないともったいないよ」とアドバイスしているのだが、これに涼は納得せず。「人生は恋とか結婚が全てじゃない。楽しまないともったいないよ」というセリフに変更して撮影したのだ。
これを知った黒崎は激怒。「誰にでも簡単にセリフを変えられたら、脚本家いりませんよね」と訴えた。ところが涼は「でも先生も、現代の女性に寄り添った作品を作りたいとおっしゃっていたので。恋愛や結婚だけが女性の幸せだと思われたら逆効果かなぁと思って」と反論したのだ。
この後、プロデューサーの柿谷成実(臼田あさ美)が同席し、黒崎に改めて謝罪するシーンでも、女性の幸せが結婚にあると主張する黒崎に、涼は「そうやって狭い価値観で女性の幸せ決め付けないでほしいんですけど」「あなたがどれだけ多数派の勝ち組なのか知らないけど、『オレが正解だから』みたいな顔してバカにするのもいい加減にしてください」と猛反論。黒崎から「自分の立場をわきまえなさい」と叱責されている。
脚本家の意図に反したセリフの変更。これと同じようなことを、日本テレビは昨年10月から12月に放送されたドラマ「セクシー田中さん」でやっている。原作者で漫画家の芦原妃名子さんが今年1月に亡くなったが、のちにドラマスタッフによる原作の改悪が行われていたことが明るみに出た。
「セクシー田中さんの脚本トラブルを思い出させるなよ」
そんな声が視聴者から出たのも無理はなかろう。なんとも苦いスタートとなってしまったのである。
(魚住新司)