【相談】
京都で三代続く懐石料理店を続けています。今は息子夫婦に代を譲り、息子が料理、嫁が女将を担当しています。私共は隠居をし、経営には口を出さないつもりですが、うちは代々比較的安価な食事を提供し、おかげで多くの常連様にも恵まれました。しかし嫁は儲け重視。手間がかかる料理はやめ、円安、原料高もあり値段もランチ1000円から2000円、夜も1万円以上のコースを提供。予約もネット予約のみで電話受付はしません。常連様も少なからず離れてしまっています。嫁に「これまで手頃な和食を提供してきた」と言っても「今の時代は違う。女将は私です」と言われ、腹立たしい思いです。今の店は先代、主人と築き上げてきました。店は潰したくありません。(82歳・元女将)
【回答】
「腹立たしい」という言葉から、今はかなり感情的になってしまっているように感じます。あなたの気持ちはわかりますが、引退して息子夫婦に経営を任せたのならば、基本的にはあまり口を出すべきでありません。別に2人共、店を潰したくて言っているわけではないと思います。
もちろん、あなた方夫婦が「これまで店を築き上げてきた」というご苦労やプライドがあるのは理解します。でも、どんなに完璧だと思ったものも時代と共に古くなっていきます。時代が変われば経営方針も変わる。それが当然のあるべき姿なのです。
値段設定に関してもこのご時世でリーズナブルなままでいいのかという疑問は当然です。ランチ1000円、夜も1万円以下のものを出していたら、店が潰れるかもしれない時代です。もちろん、高級路線にして新しい客がつくのかという不安もあるでしょう。常連客を大切にしていくのは当然ですが、恐らくあなたの年齢からして、常連客も高齢なのでしょうから、徐々に客も減っていくのが当然の流れ。店を潰したくなければ、新規の客をつかむための路線変更も当然の考えだと思います。
私はあなたの相談で、大塚家具のお家騒動を連想しました。あれも創業社長である父親とそれを継いだ二代目社長の娘との経営方針の違いでした。結局、それまでの高級路線からカジュアル路線への変更は失敗してしまいました。もちろん長期的に見た時、何が正しかったのかは一概に言えないと思いますが。
察するに、あなたは今、息子さん夫婦と同居をしているでしょう。だから経営状況が常に目に入ってくるため気になってしまうのです。もし私が同じ立場だったら、京都のどこかにマンションでも借りて、夫婦でそちらに移っていくと思います。
せっかく引退したんですから、のんびり過ごしてはいかがでしょう。
それでもどうしても気になると言うのなら、経営コンサルタントなど、第三者の意見を聞いてみるのもオススメです。多少お金はかかりますが、客観的なデータを出して、様々な提案をしてくれます。別にその通りにすることはありません。それを土台に話し合えばよいのです。息子さん夫婦に任せるか、第三者の意見を聞くか、どちらかだと思います。