3歳牝馬クラシック戦線の第3弾となるGⅠ秋華賞(10月13日、京都・芝2000メートル)を見て、オヤッと思った競馬ファンは多かったのではないか。
戦前の予想では、チェルヴィニアとステレンボッシュの2強は、いずれもオークス以来となる休み明けであり、トライアル組にもチャンスのある混戦模様とみられていた。
ところがフタを開けてみれば、1着チェルヴィニア(1番人気)⇒2着ボンドガール(5番人気)⇒3着ステレンボッシュ(2番人気)という、人気サイドでの決着となった。
セキトバイーストが前半1000メートル通過57秒1(前後半のタイム差2秒9)という玉砕的な大逃げに打って出る中、1~3着馬の道中の位置取りは、チェルヴィニアが8番手、ボンドガールが13番手、ステレンボッシュが11番手と、図らずして絶好のポジションに。
結局、1~3着馬は超ハイペースという僥倖に恵まれる形で上位入線を果たすことができた、と考えるのが妥当だろう。
休み明けを叩いた次走以降、チェルヴィニアとステレンボッシュは順当に調子を上げていくだろうが、そもそも2強と言われる両馬の実力は、怪物牝馬アーモンドアイやリバティアイランドには遠く及ばない。仮に秋華賞が平均ペースかそれ以下の流れになっていれば、両馬は最後の直線で間違いなく馬群に沈んだままだったと、筆者はみている。要するに、次走以降の重賞戦線では「危険な人気馬」となる可能性が高いのだ。
そんな中、次走での激走を予感させたのが、タガノエルピーダだった。タガノエルピーダはセキトバイーストが演出した超ハイペースを3番手で追走し、3コーナーから4コーナーにかけて前を行く2頭を射程圏内に捉えると、最後の直線に入って先頭に躍り出るという横綱相撲に打って出た。
もともと朝日杯フューチュリティステークスでジャンタルマンタル(のちのNHKマイルC優勝馬)の3着がある実力馬だが、今回の秋華賞では位置取りが前すぎたこと、仕掛けがやや早かったことがアダとなった。
それでもゴール手前まで粘り強く踏ん張り続け、1着馬からコンマ6秒差の7着で入線しているのだから、潜在能力は極めて高いと言っていい。次走以降の重賞戦線で人気を落とすようなら、迷わず狙い打ちにしたいお宝馬である。
ちなみに、道中14番手という絶好のポジションをキープしながら、末脚不発で15着に終わった3番人気のクイーンズウォークは、速い流れの高速決着に対応できなかったことが全て。稍重を含む時計のかかる馬場なら、重賞戦線での一発があっても驚けない。
(日高次郎/競馬アナリスト)