競馬界には「長距離戦は騎手で買え」という有名な格言がある。距離が長くなればなるほど、道中の折り合いやコース取り、仕掛けのタイミングが大切となり、それに長けた騎手を狙うことが、馬券で勝つための近道だと説いているのだ。
10月20日の菊花賞(GⅠ、京都・芝3000メートル)でその格言に最も当てはまる騎手は誰かといえば、まずは武豊だ。
昭和、平成、令和の3元号にわたって菊花賞を5勝しており、最年少優勝騎手を1988年のスーパークリークで、最年長優勝騎手を2019年のワールドプレミアで記録している。最年少の時は19歳7カ月23日、最年長は50歳7カ月6日だった。
今年の騎乗馬はアドマイヤテラ。父がダービー馬レイデオロ、母がクイーンC覇者のアドマイヤミヤビという良血馬だ。春はクラシックに出走できなかったが、前走の茶臼山高原特別で3勝目を挙げての挑戦となる。そのレースでは好位で折り合って、しまい34秒3の末脚を繰り出し、2着馬を2馬身突き放してみせた。成長著しいだけに、楽しみしかない。
強いて難をいえば、武は乗り替わりでの成績がイマイチなことだろうか。今回はルメールからのチェンジとなるが、このケースは過去に5回あり、2018年のユーキャンスマイルの3着が最高着順。それ以外は着外に終わっている。本人は自らが持つ最年長優勝を更新すると意気込んでいるが…。
続いては、この10年で3勝しているルメールだ。昨年のドゥレッツァは17番枠から気合を入れてハナに立ち、これで大丈夫なのかと思わせたものだが、1周目の直線ではしっかりと折り合いをつけて、ラストで抜け出してみせた。ああいった騎乗ができる騎手は、そうはいない。
今年はセントライト記念を勝ったアーバンシックで挑むが、そのレースでは遅い流れの中、前めでしっかりと折り合いがついていた。大飛びなので、広い京都の外回りはいい。自慢の末脚を存分に発揮できそうだ。
そしてもうひとり挙げるならば、2冠を狙うダノンデサイルに騎乗する横山典弘。1998年の菊花賞をセイウンスカイで勝っている上に、春の天皇賞を3勝しており、信頼性は高い。ダービーからの直行となるが、1週前にCWで6F78秒1の自己ベストを、当週も坂路で54秒2(ダービー時は同55秒5)を出して、万全の態勢だ。内枠有利と言われる4番枠に入ったことで、レースはしやすいだろう。まず好勝負必至。そして勝てば、武を抜いて最年長優勝騎手となる。
(兜志郎/競馬ライター)