これも自前のSNSアプリを持たないIT後進国ニッポンゆえの混乱だろう。SNSアプリのXとLINEが相次いで「個人情報筒抜け」の仕様改悪を発表したのだ。
まずXは10月17日、誹謗中傷や嫌がらせリプを送りつける迷惑アカウント対策の「ブロック機能」の仕様変更を、正式に発表した。これまではブロック機能を使えば、自分のアカウントに迷惑アカウントがアクセスできなかったが、今後はブロックした迷惑アカウントにも自分の投稿が筒抜けに。犯罪者やストーカーにも「個人情報」が筒抜けとなるのだ。
今年に入り、Facebookやインスタグラム、Xで問題になっているのが、自分の主義主張や意見に合わないアカウントや有名人アカウントに対し、組織的に誹謗中傷コメントや「嫌がらせ目的」の通報を大量に送りつけて閉鎖や凍結に追い込むというものだ。
筆者のXアカウントも、小中学生の粗末な給食と、寝たきり老人の胃に流し込まれる1食800円の経管栄養(事実上、本人負担のない無償化)を比較する写真を投稿したところ、本人もビックリの3800万インプレッションを叩き出したが、直後に組織的な嫌がらせ通報が相次ぎ、凍結される事態に陥った。
とあるグループ管理人によれば、FacebookでもX同様の嫌がらせが相次いでいるという。Facebookやインスタグラムでは、嫌がらせアカウントをつけあがらせるだけの、Xのような改悪の予定はないようだ。
Xの収益化システムは、フォロワーが1000人を超えると月額10万円、5000人で月額50万円、1万人で月額100万円の報酬がもらえる仕組みになっている。おかげで活動休止中の芸能人やアスリートでも、ファン1万人がフォロワーになってくれれば、生活にはそうそう困らない。
そうした収益化システムを生業としている芸能人やアスリート、有名人にとっては、迷惑アカウント集団が誹謗中傷コメントと嫌がらせ通報を繰り返すことで、アカウント閉鎖や停止に追い込まれるシステム改悪は死活問題になる。ryuchellが自殺したような、次の犠牲者を出しかねない。このX運営による改悪で一般人はもちろん、有名人の「X離れ」は加速することだろう。
さらにLINEでも10月22日から、動画機能のLINE VOOMフォローリストに自動かつ無断で友達が追加されるという「改悪」が。今後は一部の友達だけに見せるつもりだった動画も、LINE VOOMの公開リストに自動で追加された「LINE友だち」が閲覧できるようになる。閲覧制限や自動追加を希望しない場合は、よくある質問に従って設定変更する必要がある。
サッカーJリーグのJ1町田ゼルビアが、迷惑アカウントへの刑事告訴を発表したばかり、さらにアポ電強盗や留守を狙った窃盗事件がこれだけ社会不安を増幅させている最中に、SNS運営側が一方的にユーザーの個人情報を漏洩することなど許されるのだろうか。
(那須優子)