「本局は完敗だった」
ガックリと肩を落としてそう絞り出したのは、将棋の「第37期竜王戦」七番勝負第2局(10月19日、20日/福井県あわら市)で、佐々木勇気八段に103手で退けられた藤井聡太竜王である。対戦成績はこれで1勝1敗となった。
2日制の対局で、藤井竜王がここまでハッキリとした負け方を見せるのは珍しい。今回のタイトル戦以前の藤井竜王と佐々木八段の対戦成績は、4勝2敗で藤井竜王が勝ち越しているが、直近の対戦となった昨年の第73回NHK杯テレビ将棋トーナメントでは、佐々木八段が169手で大逆転勝利。藤井竜王の年度勝率1位の更新を阻止した。
今回の第2戦で、藤井竜王に目立った悪手はなかったが、佐々木八段は最後まで時間的優位に立ち、冷静に最善手を続ける充実ぶりが光った。佐々木八段が矢倉に誘導すると、藤井竜王は42手目に「変化」し、前例のない展開に。藤井竜王は積極的に攻めにいったものの、最後まで「居玉」で戦うなど、駒組みのテンポが遅かった。
まさかの藤井竜王の敗戦に、ファンの間では10月19日の昼食休息明けの「異変」を指摘する声が出ている。
この日、藤井竜王は、大根の辛みが特徴のあわら市名物「辛味しぼりおろし蕎麦」を注文。ところが休憩明け「しゃっくり」がとまらず、30分近くしゃっくりをしながらの対局となった。どうやら辛み大根が喉の粘膜を刺激して、しゃっくりを誘発してしまったようである。このしゃっくりで、対極に集中できなかったのではないか。
初日の昼食は少々刺激が強かったのか、藤井竜王は2日目、あわら市内にある創業50年以上の鉄板ホルモン焼き店が提供する「ホルモンうどん」を昼食に選択。スタミナ万全で挑んだが、序盤の立ち後れを取り戻すことはできなかった。
第3局は、10月25日と26日に京都市右京区「総本山仁和寺」にて行われる。今のところ両者の実力はほぼ互角とみられているが、激戦の勝敗を分けるのは「昼食の選択」かもしれない。
(ケン高田)