石破茂総理はどこから「補正予算」を持ち出すつもりなのだろう。首都圏で相次ぐ闇バイトを実行役とする連続強盗死傷事件について、石破総理は記者団に対し「必要であれば、一連のことに対して補正予算も通じて対応していきたい」と語った。
また同日、青木一彦官房副長官は会見で、防犯ボランティアによる地域安全活動の一層の活性化などに向け、石破総理から地方創生交付金を充てるよう指示があったと述べている。連続強盗致傷事件は首都圏で起きているのに、無関係な地方に予算をバラ撒いて、何の「費用対効果」が見込めるのだろうか。
納税者は相次ぐ増税と食料品の値上がりで、生活が苦しい。与党の衆院選公約には「貧困世帯、年金生活者へのバラマキ」が盛り込まれてはいるものの、「減税」の文字はない。つまり補正予算も地方創生交付金も、羽振りのいい衆院選公約の財源は、選挙後に課せられる我々への「増税」なのだろう。
加害者も被害者も救いのない連続強盗殺傷事件。横浜市の強盗殺人事件で現金20万円を奪うなどの容疑で逮捕された22歳の男は警察の調べに「税金の滞納が数十万円あったので、短期間で稼げるバイトを探した」と、闇バイトに応募したいきさつを語っている。その供述を裏付けるように、家宅捜索では自宅の机から「税務署からのハガキ」が見つかったという。
この事件で亡くなった70代男性は、元エンジニア。定年退職後も後進の指導にあたっていたといい、全国紙社会部デスクは次のように人物像を語る。
「定年後も働き続け、最近は家具作りなど新しいことにチャレンジしていた意欲的な人だった、との証言があります」
千葉県市川市の被害者宅では、70代の母親が夜勤で不在にしていたところを強盗団に押し入れられ、ひとりでいた50代の娘が拉致監禁された。前出の社会部デスクが言う。
「加害者は内装業や塗装業に従事する20代。昔であれば『親方』の元で修行していた年代ですが『零細企業』の親方が雇い入れたくても高い社会保険料が足枷となり、社員として採用できない。結果、個人事業主として安い日当で使い捨てされる、というのがオチです。さらに安い日当の中から税金と健康保険料、年金の督促もくる」
新型コロナで自由と時間を奪われたZ世代はかくして「闇堕ち」し、最後には犯罪者として使い捨てられる。
連続強盗殺傷事件の容疑者が「税金を払えない」と供述していてもなお、増税ありきのバラマキ公約を掲げる「絶望と鈍感」内閣にNOを突きつけるため、選挙の投票に行くことにしよう。
(那須優子)