「いやぁ、待ってましたよ」
そう切り出したのは、関東在住の馬券師ライターT氏である。どうやらこの週末、待ちに待ったレースがあるようだ。そして、こう豪語するのだ。
「天皇賞・秋の前日、京都の超大荒れレースで勝負しないなら馬券師じゃない」
10月26日の土曜日、京都競馬場のメインレースは芝1400メートルのGⅡ・スワンS。とにかくひと筋縄ではいかないこのレースは近年、大荒れが続いている。なんと過去4年間の3連単平均配当が40万円を超えているのだ。なぜ、ここまで荒れるのか。T氏が説明する。
「ここ3年、18頭のフルゲートが続いているように、毎年出走頭数が多いことがまずひとつ(今年は17頭立て)。京都芝1400メートルで古馬が出走できる重賞レースは、京都牝馬SとこのスワンSしかない。つまり、牡馬はこのレースのみです。だから本当にどの馬がこの条件で激走するか、わからない。よって、近走の成績がいい馬が押し出され、人気になるわけです。ところが、彼らが期待したほど馬券に絡まないので、大荒れ配当になるという仕組みですね」
T氏が言うように、荒れたこの4年間で3着以内に入線した12頭のうち、前走で掲示板を外していた馬(6着以下)は7頭。そのうち5頭は、前々走も掲示板に載っていない。近走好走馬の信用度が著しく低いのだ。
しかし、何を信じていいかわからないレースで、どのように馬券戦略を立てたらいいのか。本当に勝負レースになりえるのだろうか。
改修工事の影響で阪神競馬場で開催された2021年から2022年を省き、改修前の2020年、そして昨年の京都での同レースがヒントになると、T氏は言う。
「近走の好成績がアテにならないなら、人気馬の弱点を考えていても本命馬は見つからない。ならば近走で掲示板を外しまくっている中から、今回走れる要素のある穴馬をピックアップすればいいわけです。これが意外と簡単な話。スワンSは、かつての京都実績がモノを言うのです」
T氏によれば、2020年、2023年で馬券になった6頭のうち、京都未出走だった昨年2着のララクリスティーヌ(6番人気)以外は、そもそも京都が得意だったフシがあるというのだ。
「2020年の2・3着馬は京都1戦1勝。11番人気で激走した1着馬のカツジは、京都で7回走って3回馬券になっていた。しかも、負けたうちのひとつがGⅠ・マイルチャンピオンシップの4着。十分に走る下地があったわけです。2023年は2年間の改修工事の影響で、京都で走るチャンスが少なかった馬だらけだった。6番人気2着のララクリスティーヌこそ京都未出走でしたが、2022年のスワンSは2着という実績があった。そして残る2頭、10番人気で1着のウイングレイテストは過去に京都1戦1勝、11番人気3着のロータスランドは京都1戦で2着。チャンスさえあれば、京都で好成績を積み重ねた可能性のある馬ということになる」(T氏)
T氏の説に乗るならば、近走の凡走は無視して穴馬の戦績を遡り「京都実績」を探ればいいということになる。
「今年ならセントウルS11着からのジョウショーホープ、キーンランドC7着からのダノンマッキンリー。どちらも京都1戦1勝です。しかも芝1400メートル実績はジョウショーホープが連対率7割、ダノンマッキンリーは4戦3勝です。ところが事前の人気予想では、それぞれ11番人気と7番人気。こういう馬が激走することで、スワンSは例年荒れるということです」(T氏)
人気薄がアタマ(1着)に来れば、自然と3連単配当は上がる。相手探しも京都実績で振り分ければ、自然に絞れるのだ。
天皇賞・秋の前日は、人気の盲点となっている「隠れ実績馬」を見つけ、資金を溶かさず高配当3連単をサクッといただきたい。
(宮村仁)