横浜F・マリノスを代表する選手として真っ先に名前が挙がるのは、中村俊輔と松田直樹だろう。2002年、横浜でプロとしてキャリアをスタートさせた那須大亮氏は、2人のアドバイスに救われたという。
元日本代表の橋本英郎氏のYouTubeチャンネルに出演した那須氏は、自身のサッカー人生を振り返った。駒澤大学在学中に、自ら売り込みをかけて横浜と契約した那須氏だったが、ピッチに立つどころかベンチ入りすらできず、人生で初めて腐っていた。そんな時に声をかけてくれたのが、松田だった。那須氏がそのシーンを振り返る。
「僕は腐ってたんで、練習もちゃんとやっていなくて、そしたら松さんに『おい、どうした』って突然、言われて。『お前が元気ないと、俺、元気出ねえんだけど。どうしてくれる。お前、元気出せよ』って、ポロッと声かけてくれたんです。代表にバリバリ出ている松さんから声をかけていただいて、頑張らないといけないと。そこが着火点でした」
松田とは何度か食事に行ったものの、特に親密な関係ではなかったが、気にかけてくれたことに感動し、練習態度を改めることになった。
その後、紅白戦にサブチームとして出場し、スタメンチームの選手を相手に激しく当たりにいくと、相手選手が激怒し、監督に注意される事態に発展。そして練習後、中村から風呂に誘われた。
「俊さんは普段、全然しゃべらないんですよ。風呂に行くぞって誘ってくれて、忘れもしない、スカイスパっていういい温泉が横浜にあるんですけど、そこに連れて行ってもらって。『那須さ、今日のプレーを続けろよ』って言っていただいた。そこが僕のプロとしての指針になった。『他のコーチングスタッフや選手は絶対見てるから、続けろよ』というのと『すぐに移籍するなと』と言われました。試合に出られないからすぐ移籍して状況を変えると、全く同じ状況になるから、と」
この言葉に救われたというが、当の中村はこのことをまるで覚えていなかった、というオチがついたという。
新人選手の人生を変えたレジェンド2人の言葉は、あまりにも尊い。
(鈴木誠)