大谷翔平と山本由伸が移籍1年目から世界一の美酒に酔いしれた、MLBワールドシリーズ。興奮が醒めやらないアメリカで、大統領復帰を狙うトランプ陣営の暴言が大炎上している。
それは10月27日、ニューヨークで開かれたトランプ陣営の集会でのことだった。登壇したコメディアンのトニー・ヒンチクリフ氏が、こう言ったのだ。
「海の真ん中に浮かぶゴミの島がある。プエルトリコと呼ばれている」
アメリカ本土にはプエルトリコ出身の移民約580万人が暮らしているほか、ドジャース球団一のイケメン、キケ・フェルナンデスのほか、大谷と公式シーズンMVPを争うメッツのフランシスコ・リンドーアもプエルトリコ出身。ドジャースVSパドレスの地区シリーズ第1戦を3回5失点で降板した山本をカフェで励ましてくれた恩人キケをゴミ扱いとは、聞き捨てならない。
そんな差別とヘイトスピーチでアメリカを分断するトランプの前に、ターミネーターが立ち上がった。ハリウッド俳優で元カリフォルニア州知事のアーノルド・シュワルツェネッガーが大統領選挙終盤に「ハリス支持」を表明したのだ。
シュワルツェネッガーはジョン・F・ケネディの姪と結婚(隠し子騒動で2021年に離婚)したが、俳優出身で元カリフォルニア州知事という共通の経歴を持つ共和党のレーガン元大統領と親交が深かった。そしてブッシュ元大統領やジョン・マケイン議員の大統領選挙では、熱心な選挙応援をしていたことで知られる共和党支持者だ。
そのシュワルツェネッガーが、トランプ自身の「もうひとつのゴミ発言」に噛みついたのだ。
「トランプの『(移民だらけの)アメリカは世界のゴミ箱のようだ』という発言に怒りを感じている。私は共和党員である前に、アメリカ人だ」
トランプの過去の失言を掘り起こし、ライバル政党のハリス支持を表明したのだ。ちなみにシュワルツェネッガーは過去にNBCの人気番組で、初代MCだったトランプから執拗な嫌がらせを受け、トランプから継いだ2代目MCを2年で降板させられた私憤も煮えたぎっている。
ワールドシリーズに話を戻せば、全米の視聴者は第4戦が行われたヤンキースタジアムで、アフリカ系アメリカ人のムーキー・ベッツがファウルフライを捕球した際、白人系の2人組の観客がベッツの手とグラブをつかんで妨害した「胸糞シーン」がある。第3戦、第4戦のヤンキースタジアムのチケットは、現地報道によると平均2000ドル(30万5000円)超え。トランプ陣営の「ゴミ発言」によって、大枚をはたいて野球観戦する白人系ニューヨーカーの乱暴狼藉と多国籍軍ドジャースの優勝が、全米538人の選挙人団にも影響を与えそうだ。
大統領選の勝敗を決めると言われる7つの激戦州のひとつ、ペンシルベニア州の人口の10%はアフリカ系で、プエルトリコが大半を占めるヒスパニック系が7%、そして3%はアジア系。大統領選挙の投票権は一般市民にはないが、トランプは激戦州の人口の2割を敵に回したと指摘されている。
「未来は変えられる」
世界中が「もしトラ」を懸念する大統領選。ターミネーターの名言通り、11月5日の選挙結果と未来は変えられるか。
(那須優子)