昨年の右肘手術に続き、ワールドシリーズ第2戦で亜脱臼した左肩関節の修復手術を受けた、ドジャースの大谷翔平。年内いっぱいは左肩を動かすことができないため、二刀流復活は来夏以降、あるいは再来年にずれ込むことが濃厚になった。
ドジャースのチームドクターで、伝説的名医フランク・ジョーブ博士の一番弟子でもあるニール・エラトロッシュ医師はワールドシリーズ終了後、連日のようにドジャース投手陣にメスを入れている。日本より整形外科医の人数が少ないアメリカでは、1人の整形外科医が1日2例、年間500例以上も執刀するのが一般的だ。
8月に先発ローテーションから外れた「ドジャースの王子様」ことタイラー・グラスノーは11月4日にSNSで、右肘の再手術を受けたと報告した。来春に復帰できる見込みだという。
ドジャースの絶対的エース、クレイトン・カーショーも、11月7日にSNSで左膝と左足(つま先)の手術を受けたと明かし、エラトロッシュ医師らに感謝の気持ちを綴った。
昨年、左肩手術を受け、今季は7試合の登板に終わったカーショーには、選手側が来季の選択権を持つオプション契約があったが、11月4日にこの契約を破棄。FAとなっていた。「生涯ドジャース」を宣言しているカーショーは今後、自身の出来高の比重を大きくした再契約を結ぶとみられている。
先発ローテーションの一角、ギャビン・ストーンも10月9日に右肩手術を受けたが、ストーンの復帰は再来年の見込みだ。それでもド軍はポストシーズンに山本由伸、ビューラー、フラハーティが奮闘した。これで手術の経過が良好なグラスノーとカーショーが復帰すれば先発ローテーション投手が揃うため、大谷が「二刀流」復帰を急ぐ必要はなくなる。
日本のファンは来季のメジャーリーグ開幕戦カブスVSドジャース戦で「先発投手・大谷翔平」のコールを聞きたかったが、記者団の取材に応じたブランドン・ゴームズGMは大谷の肩と肘の状態について「標準(治療)と違って不透明」と語った上で「(大谷に)投手としての復帰時期は設定しない」と言及。ゴームズGMのニュアンスから、東京ドームでの凱旋登板はほぼ絶望的とみられる。
そもそも大谷が受けたとされる右肘のハイブリッド手術は、断裂した肘の腱の代わりに人工繊維と自分の腱の両方を移植するが、一般的には人工繊維が肘関節に完全に定着して全力投球できるまでに、2年かかると言われる。二度目の手術なのでリハビリにはさらに時間を要するし、もし移植した腱を左腕から採取していたら、左肩関節の術後リハビリもより複雑なものになる。
これらの要素を加味すると、左肩亜脱臼のアクシデントがなかったとしても、二刀流の本格復帰は来夏以降が濃厚に。二刀流の元祖・宮本武蔵も一乗寺下り松の決闘後、表舞台に出てこなかった時期がある。我々も大谷の「二刀流復活」をのんびり待つとしよう。
(那須優子/医療ジャーナリスト)