日本のサッカーファン、とりわけ横浜F・マリノスのサポーターには驚きの発表だった。
11月6日にUAEサッカーの強豪クラブで知られるアル・アインが、元アルゼンチン代表FWのエルナン・クレスポ監督を電撃解任したのだ。
優勝候補の一角だった今シーズン、チームは開幕から5試合を消化して2勝1敗2分の8位と低迷。特にディフェンス陣の崩壊に歯止めがかからず、フロントが早期に決断を下したようだ。
クレスポ監督は5月に行われたアジアチャンピオンズリーグ(ACL)の決勝戦で、アル・アインを率いて横浜F・マリノスとホーム&アウェーで激突した。しかも横浜を率いていたのが元オーストラリア代表FWのハリー・キューウェル監督だったことで「20年越しの再会」が大きな話題となった。サッカーライターが解説する。
「選手時代に2004年-2005年の欧州チャンピオンズリーグ決勝で、リヴァプール(イングランド)のキューウェルとACミラン(イタリア)のクレスポが対戦しました。『イスタンブールの奇跡』と今も語り継がれる名勝負に2人が先発出場したことで、ACLの会見ではその質問が集中。クレスポは『アメージングな状況』と笑い飛ばしていましたが、キューウェルは『そんなことに興味がない』とピリピリムードでしたね」
試合は2試合の合計3-6で横浜が敗れ、世界的なクラッキ(名手)対決はクレスポ監督に軍配が上がった。
それからわずか6カ月で両監督ともにクラブを去ることになるなど、特に2人を目の前で見た日本のファンは予期していなかったはずだ。特にキューウェル監督は「アタッキング・フットボール」の攻撃的なスタイルをより進化することを求められ、今季から横浜監督に就任したばかりだった。
「第20節のアビスパ福岡戦から4連敗するまで引き分けが多く、チームが12位に沈んでいたことで見切りをつけられました。フロントからは『結果的に見込み違いだった』とまで言われ、さすがに同情の声が聞こえてきましたね」(前出・サッカーライター)
奇しくも途中解任を味わうことになったが、今後の進路は明暗が分かれそうだ。サッカーライターが続ける。
「キューウェル氏はこれまで5クラブの監督を務めていますが、黒星が先行するばかりで、1シーズンもったのは1クラブだけ。一方でクレスポ監督はアル・アインでACLを優勝していますし、2020年にも世界的に無名のデフェンサ・イ・フスティシア(アルゼンチン)を率いて、南米のUEFAヨーロッパリーグに該当する『コパ・スダメリカーナ』で初優勝に導いた実績がある。引く手あまたで、世界中からオファーが届くのは確実でしょう」
この先、新しいクラブの指揮官として、2人が三度目の顔合わせをすることはあるのだろうか。
(風吹啓太)