11月10日に京都競馬場で行われた牝馬GⅠ・エリザベス女王杯(芝・2200メートル)。圧倒的1番人気(単勝1.9倍)に推されたレガレイラ(牝3)は、「今度こそ」のファンの期待も虚しく、なぜ5着に沈んだのか。
レース後、鞍上のルメールが「直線でぶつけられて」と振り返ったように、敗因は最後の直線での不利にあったというのが大方の見方だ。しかし筆者の確信的見解はこうである。
「名手ルメールが強引な割り込みによって過怠金5万円を課された直線でのアクシデントがなかったとしても、勝ち負けにはなっていなかった」
その理由を説明しよう。
話は1番人気のレガレイラが6着に敗れたGⅠ・皐月賞(4月14日、中山・芝2000メートル)に遡る。この時、筆者は本サイトが4月19日に公開した敗因分析において「差し、追い込み馬」には「スローペースで末脚を炸裂させる馬」と「ハイペースで末脚を炸裂させる馬」という2つのタイプが存在することを指摘した上で、レガレイラに潜む弱点を次のように指摘した。
〈今回の皐月賞は、超のつくハイペース。レガレイラは第一のタイプに属する差し、追い込み馬であり、ハイペースには対応できない馬である可能性が浮上してくるのだ。「レガレイラはスローペースから平均ペースのレースでこそ、その鬼脚を爆発させる」という教訓は、今後の馬券作戦を考える上でも、記憶しておいて損はないはずである〉
はたせるかな、今回のエリザベス女王杯は1000メートルの通過タイムが59秒6と、同レースの平均ラップをやや上回る、準ハイペースで流れた。しかも3コーナー過ぎから長く続く坂の下りではペースが一気に上がり、優勝したスタニングローズ(牝5)は、2001年にトゥザヴィクトリーが刻んだレースレコードを0秒1上回る、2分11秒1という勝ちタイムを弾き出す結果となったのだ。
このようなレースラップの中で、出遅れ癖が懸念されていたレガレイラは、いつになく中団やや前のポジションをキープ。ところが、ルメールが「好きなポジションを取れませんでした」と明かしたように、向こう正面あたりからジリジリと中団後方にまで位置取りを落とし、鬼脚を爆発させることなく馬群に沈んだのである。
道中で理想的なポジションを維持することが難しく、3~4コーナーの勝負どころでマクリ上げていく脚もない。
結局、現時点でレガレイラがその非凡な潜在能力を余すところなく発揮できるのは「4コーナーで馬群が団子状態になるスローペースを、最後方から大外一気に差し切るレース以外にはない」と、筆者は喝破しておく。
この点もまた、覚えておいて損はない教訓だろう。
(日高次郎/競馬アナリスト)