「9月のローズSで語らせていただいた際、レガレイラは春に無理したツケが回ると断言しましたが、その通りになった。あのレースを叩いて、今度こそ必勝と思われているなら好都合。日曜日のエリザベス女王杯では、同じことが起きますよ」
11月11日に京都競馬場で行われる牝馬のGⅠレース「エリザベス女王杯」について、馬券師ライターのT氏は自画自賛だ。
というのも、春に牝馬路線ではなく皐月賞⇒日本ダービーと牡馬路線を歩んだ、今回1番人気有力のレガレイラは過去の例に漏れず、秋は反動期間になると読んでいたからだ。上がりこそ1位のタイムだったが、ローズSの5着はしてやったりという結果だった。
ところで同馬はここ4走すべてで出遅れに近いスタートで、後方待機を強いられている。その癖を解消するために調教では前につける稽古をしているが、T氏はこう豪語するのだ。
「調教が功を奏せば…というレベル。しかし、本番で出遅れ癖が簡単に解消された例はほとんど見たいことがないし、むしろ前につけたら後半にいい脚を使えなかった、というケースが少なくない。これで1番人気なら、押さえ以上にはならないでしょう。しかも京都のエリザベス女王杯は、後方一気の馬はことごとく差し届いていない。どちらに転んでも、レガレイラを本命にするのは愚策です」
確かに京都競馬場の改修工事のため、阪神競馬場で行われた2020年から2022年の3年間、内回りコースを意識した先行激化が要因となって、ラッキーライラック、アカイイト、ジェラルディーナと、3コーナーまで10番手以下で競馬をした3頭が差し切って勝利している。
一方、京都の2200メートルは外回りコースで、直線が長くなる。一見、差し馬が有利に思われるが、良馬場で行われた京都開催では3角から4角に続く坂の下りで先行馬がさらに加速するため、10番手以降の後方待機馬はどれも差し届かず、3着が限界なのだ。つまり、レガレイラが普段の競馬をするなら、馬券に絡んでも3着が精一杯ということになる。
ではいったい、馬券の中心となる馬はどれなのか。T氏がある傾向から、買うべき馬を探り出した。
「阪神開催と京都開催の決定的な違いは、前走で府中牝馬Sを使ってきた馬の好走率。2018年以降の京都開催の3回で馬券になった9頭中、半数以上の5頭がそこからの臨戦です。しかも、負けても0.6秒以内の好走馬ばかり。左右の回りこそ違いますが、直線が長く広い東京⇒京都外回りでリンクする部分があるのでしょう。そうなると今回の本命は、府中牝馬Sの2着で上がり32.8の脚を使ったシンティレーションとなる」
シンティレーションは重賞未勝利馬。京都は1戦6着と未知数だが、これは内回り2000メートルでのものだ。T氏はこう語る。
「エリザベス女王杯には、このレースでしかGⅠを勝てない牝馬だらけ、という歴史がある。その理由は、非根幹距離の2200メートル。クラシックとは直結しないことで、有名GⅠでは少し足りない馬が激走するわけです。ひと言で言うならば、レガレイラの舞台ではない。ですが、シンティレーションは同じく非根幹距離の1800メートルを主戦場とする馬で、血統的にもスタミナ不足とは言えない。中段より前につけられる脚質で、今回の外回り2200メートルで本領を発揮する可能性が高い」
T氏はほかに、2200メートル4戦3勝のホールネスを挙げたが「実績のわりに人気になりすぎ」と少し残念がった。
「今年の女王杯は京都実績の乏しい馬が多く、各馬の信頼度が低い。ならば、ホールネス以外の相手候補として、府中牝馬Sはプラス20キロの馬体重で全く勝負にならなかった昨年3着のハーパーが、それこそひと叩きでガラッと変わってくる。エリザベス女王杯は2年連続で馬券になるケースが非常に多い。これも非根幹距離の特徴です」
また、T氏は3連単のヒモで、女王杯が得意な外国人騎手を並べておく必要がある、と付け加えた。
馬券師の日曜メイン馬券は、シンティレーションからホールネスとハーパーを相手の軸に、ムーア騎乗のサリエラ、C・デムーロ騎乗のスタニングローズ、ルメール騎乗のレガレイラを3着に並べた「京都外回り3連単」だ。のるかそるか、皆さんの健闘を祈る。
(宮村仁)