家に侵入してきた強盗団を住民が日本刀で撃退! 山口県岩国市で強盗未遂事件が発生したのは22年11月のことだった。それから2年、頻発する強盗事件を受けて、フリーライターの根本直樹氏が日本刀の真の実力を現役ヤクザに問う。
闇バイト強盗への対策として、自宅に常備していた日本刀を手に応戦する。果たしてこれは有効な方法なのか。
「一言でいえばものすごく効果的だよ。ただし、剣術や剣道の心得がある、あるいは昭和の不良で日本刀を扱ったことがある人間に限るがね」
こう語るのは都内を拠点とする広域組織3次団体の幹部Y氏(70)だ。
「サラリーマンやってきて、喧嘩もしたことのないようなそのへんの爺さんが急に日本刀持ったところで、逆効果(笑)。高倉健じゃないんだからよ。一般人が簡単に扱える代物じゃねえ。ヤクザでも昭和40年代なかば頃までに活躍したヤツじゃないとまともに使えないよ」
素人が日本刀を持ち出すとどうなってしまうのか。
「ちょっと前にうちのバカな若いヤツが掛け合いの時に持ってってさ、勢いで鞘から抜いちゃったんだよ。抜く時にまず左手切って、振り回したとたん、自分の左の膝あたりをぐっさり切っちゃった。そんなの笑いもんだよ」(Y氏)
とはいえ、事件の凶悪化が叫ばれる昨今、「殺るか殺られるか」という究極の選択を迫られることも。
「仮に相手を斬りつけたとして、偶然相手の首をぐっさりとやっちゃったらどうなる? 仲間の闇バイトはビビって逃げるだろうが、過剰防衛になるかどうか、面倒くさい取り調べと裁判が待っているだけ。模造刀で十分」(Y氏)
なお、日本国内で日本刀の真剣を所有すること自体、それほどハードルは高くないようで、
「田舎の古い家の床の間なんかには今も先祖から受け継がれた古い刀が飾ってあったりするだろ。新規購入にしたって、古物商の店にいくらでもある。無銘のものだったら数千円で投げ売りされていることも。購入したら20日間以内に登録証に記載されている都道府県の教育委員会に『所有者変更届』を出すだけ。だからといって、闇バイト対策として買うアホはいないと思うけどな(笑)」(Y氏)
では、我々庶民はどんな対策を取ったらいいのか。元半グレ組織の幹部で、解体業を営む社長のR氏(45)はこうアドバイスする。
「しょせん、ド素人の闇バイトの若造。本人たちが一番ビビっている。ヤツらを退散させるには刃物なんてむしろ危険。じゃあ、どうすりゃいいのか。ポイントは光と音ですよ」
半グレ時代に幾度も刃傷沙汰で逮捕されただけに、言葉には重みと説得力がある。R氏が続ける。
「警備員の持っているデッカイ超高輝度の懐中電灯、わかります? あれを当てられると相当に眩しいですよ。侵入者に気づいたら、顔面に光をかましてやる。それだけでも相当効果的ですが、もう一つは音。侵入者が最も嫌がり、ビビるのが突然鳴り出す大きな音ですよ。老人ということを考えたら、ボタンひとつでいつでも自宅の内外に緊急音を流せる装置を取りつけておくのはものすごく有効。簡単だし、一発で逃げていきますよ。ヤツらが侵入前の下調べで犬がいる家を避けるのは音が困るからです」
防犯グッズを購入する際は、この「音と光」の2大要素を頭に入れておいてほしい。
元警視庁刑事で犯罪心理学者の北芝健氏は言う。
「日本刀は確かに有効かもしれませんが、私に言わせれば、公園に落ちている棒切れでもいいんです。大切なのは、犯人と距離を取り、平常心を保つこと。そのためには寝室に伸縮式の警棒をお守りとして置いておくのもいい。路上強盗も増えていますが、刃体が6㌢以上の刃物を携帯すると、銃刀法に触れるので注意が必要です」
物騒な世の中になったものである。