短期免許の交付で2年ぶりに来日したクリスチャン・デムーロ騎手(写真/JRA提供)が、手が付けられないほど勢いを増している。参戦した米ブリダーズカップこそ3着、9着と勝つことができなかったが、3週前に1着8回、2着5回、3着4回、着外6回。そして先週は1着5回、2着6回、着外8回と計13勝を挙げて、連対率はなんと5割5分8厘。この中には、スタニングローズで勝利したエリザベス女王杯(GⅠ)もあり、中身は濃い。有馬記念までは騎乗する予定なので、今後もドンドン勝ち星を積み上げていくことだろう。
その騎乗馬はノーザン系クラブの馬が圧倒的に多い。スタニングローズもその一頭であり、クラブを挙げて全面的にバックアップしている。待ってましたと言わんばかりに、騎乗依頼が舞い込んでいるのだ。そしてその期待に概ね応えているのだから、凄いと言うほかない。
本人は日本で通年騎乗することを望んでおり、現在拠点としているフランスで、講師について日本語を勉強中。マスターにはまだ時間がかかるようだが、近い将来、通年免許試験を受ける予定だと聞く。
日本にいる間は兄ミルコ・デムーロの家で生活しており、日本の言葉や習慣などを兄から教わっている。
凱旋門賞を2勝しているように、フランスでは何本かの指に入る名手だが、残念なことにあちらの賞金は日本よりもずっと安い。歴史のあるパリ大賞典(GⅠ)でも日本円にすると4000万円ほどだから、リーディング上位のジョッキーでも日本の中堅騎手の年収とそう変わらないと言われる。
それだけに、世界一賞金が高いと言われる日本の競馬は、魅力大なのだ。兄のあとを追うように、数年後には日本で毎週、騎乗する姿を見られるかもしれない。
この週末はマイルCS(GⅠ、京都・芝1600メートル)で、昨年の覇者ナミュールに騎乗する。栗東の坂路での最終追いは4F56秒6ーラスト1F12秒0馬なりと地味なものだったが、時間をかけて丹念に乗り込まれており、心配無用どころか、かえっていい。思えば昨年も、坂路で4F58秒台だったのだ。
血の勢いも見逃せない。1カ月前の秋華賞では、父が同じのチェルヴィニアが勝利し、先週のエリザベス女王杯でも半妹ラヴェル(12番人気)が2着に激走した。いい流れが確実に来ているのだ。クリスチャンは「メンバーは強いけど、今週も勝てるように頑張りたい」と、自信ありげだ。
(兜志郎/競馬ライター)