甲子園球場で行なわれた阪神ファン感謝デー(11月23日)に、渦中の大山悠輔が参加した。過去、FA権を行使した阪神選手は、このイベントへの参加を見送っていた。混乱を懸念する向きもあったが、終始和やかなムードだった。
球団は今も慰留に努めているが、「有事」に備える必要はある。獲得が囁かれているのは、エンゼルス傘下3Aにいたケストン・ヒウラなる選手だ。
メジャー通算50本塁打の内野手で、主に一塁を守る日系3世。ミドルネームは「ナツオ」だという。2017年の全米ドラフトでブリュワーズに1巡目指名(全体9位)されて入団。2019年にメジャーデビューすると、84試合の出場で打率3割3厘、19本塁打の成績を残す。ちなみに3A時代の2018年には、当時エンゼルスの投手・大谷翔平と練習試合で対戦し、二塁打を放った。
そのヒウラは、実は大山と「対面していた」ことが分かった。2016年7月に開催された日米大学野球選手権で、大山は日本代表チームの4番として、ヒウラはアメリカ代表のホープとして、計5試合に臨んでいたのである。
大山はその3カ月後に阪神にドラフト指名され、2学年下のヒウラは「将来のホープ」と期待されていた。
「その翌年のカリフォルニア州の大学リーグ戦で、脅威の打率4割超え、出塁率5割6分7厘と大爆発します。9歳からアメリカで有名な打撃インストラクターの指導を受けてきた天才打者ですが、2020年以降は成績不振で苦しみました」(現地ジャーナリスト)
大山は5試合トータルで15打数2安打、ヒウラは10打数1安打。大山は4番・三塁でフル出場したが、ヒウラがスタメン出場したのは第1戦と第3戦のみ。あとはベンチスタートとなっている。当時を知る何人かの関係者に聞いてみたが、
「ヒウラの印象? 出場していたの? 覚えていない」
とつれない返事ばかりだった。
「ヒウラが伸び悩んだ原因はいろいろありますが、一発を求めすぎたのか、バットが遠回りするクセがあるそうです」(前出・現地ジャーナリスト)
ちなみに、くだんの日米大学野球選手権には、現在のプロ野球界で活躍する選手が多く出場していた。投手では中日・柳裕也、DeNA・佐々木千隼、濱口遥大、阪神・伊藤将大など。野手では大山以外に巨人・吉川尚輝、DeNA・京田陽太。
ヒウラが5番DHでスタメン出場した第1戦は、先発の佐々木千隼から3打数ノーヒット(1三振)と翻弄された。「トータル1安打」だが、その1本は内野安打。三塁手が打球処理でミスし、「ヒット」ではなく「失策」が記録されてもおかしくない内容だった。ちなみに、その三塁手が大山である。
そのヒウラが大山流出時の代役として浮上してきたのだから、2人は「運命的に結ばれていた」のかもしれない。
「当時、アメリカ打線はタイミングが取れず、苦労していた記憶があります。日本の各投手は走者がいない場面でもセットポジションを使い、クイックモーションや足を下ろすタイミングを変えるなどのテクニックを駆使していました」(球界関係者)
大山もアメリカの初見投手との対戦に苦労していたようだが、ヒウラも日本の投手にタイミングが合っていなかった。来季、2人は再会を果たすことになるのだろうか。
(飯山満/スポーツライター)