派閥パーティー収入の政治資金収支報告書への不記載問題をめぐり、石破茂首相ら党執行部と、旧安倍派議員との攻防が、ヤマ場を迎えている。
萩生田光一元政調会長は衆院政治倫理審査会に出席しなかったとして、10月の衆院選で党公認を得られなかったことから、今回は出席の意向を示しているが、年内に終結するよう求めている。だが野党側はこの問題を来年夏の都議選、参院選まで継続させたい意向で、石破執行部は板挟みの状況に陥っている。
自民党の森山裕幹事長は12月5日に萩生田氏と会談し、旧安倍派の不記載議員の政倫審出席について話し合った。森山氏らは、参院でも政倫審を開催するので、衆院側も野党の要求に応じて開催せざるをえないと説明している。
旧安倍派議員らは応じる意向であるものの、これ以上、この問題を長引かせないとともに、政府の役職に就けない人事上のペナルティーをやめるよう求めた。
12月8日に開催された、石破首相ら執行部と落選した候補者との懇談会でも、旧安倍派の最高顧問である衛藤征士郎元衆院副議長が不記載問題について「党として終結したと宣言すべきだ。いつまでも引きずられてしまう」と訴えた。
衛藤氏は会合後、記者団にこう語った。
「自民党ではピンチの国会議員に対して、総裁と幹事長が先頭に立って支援の手を差し伸べてきた。今回はどうなのかと静かに思い、対処することを申し上げた」
不記載議員の多くは萩生田氏のように非公認になるか、あるいは比例代表との重複を認められないなど、事実上の制裁を受けた。衆院政倫審は5月、旧安倍派を中心とした不記載議員のうち、弁明をしていない44人を審査対象とすると議決したが、衆院選では15人が再選を果たした。
15人に共通しているのは、こんな不満だ。
「我々は逆風の中、選挙の審判を経て当選した。それにもかかわらず、野党の求めに唯々諾々を従う石破首相や森山幹事長は、何を考えているのか」
対応を間違えると、崩壊したシリアのアサド政権のように「石破降ろし」が一気に起きるかもしれない。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)