「メモリアル被弾投手」は、日本で「変貌」できるのか。ヤクルト・スワローズがマイアミ・マーリンズからFAとなっていたマイク・バウマン投手を獲得する。正式発表はこれからだが、複数の米メディアが「すでに契約合意で近く正式契約」と報じている。メジャーリーグを取材するスポーツジャーナリストが解説する。
「メジャーリーグ・デビューは2021年終盤戦、主にリリーフで通算134試合に登板しています。目立った活躍はありませんが、色々なニックネームで呼ばれていますよ」
その一例が「メモリアル被弾」だ。9月19日のドジャース戦でリリーフ登板し、大谷翔平に節目の50号アーチを食らって「50-50」(50本塁打50盗塁)を達成させた。不名誉なことではあるが、大記録をサポートした投手として、球史に名を残したわけだ。スポーツジャーナリストが続けて言う。
「運のいい投手なんです。ハマリ役はロングリリーフですが、彼が投げている間に味方打線が逆転に成功することが多く、2023年はリリーフで10勝を挙げてみせました」
「リリーフで10勝」は、2023年の珍記録として取り上げられたそうだ。
ヤクルトのチーム防御率3.64はリーグワースト。そんな「幸運ぶり」でチーム再建にひと役買ってもらいたいが、こんな数値も残されている。それが「40%以上」だ。この異名はいったい何を指すのか。
「味方投手が打たれ、その火消し役で登板すると、走者を生還させる割合が40%以上を記録しています」(前出・スポーツジャーナリスト)
リリーフで10勝、勝ちゲームの火消し役で投げさせたら40%以上で失点。ということは、負け試合でしか使えない投手、とも解釈できる。
バウマンは直球の平均球速が93マイル(約150キロ)を超える。変化球は多彩で、曲がり幅の大きいカーブには定評があり、ローテーションの谷間を埋める先発投手としてもチームに貢献してきた。「便利屋」の異名を持つのはそのためだが、今季はオリオールズで開幕を迎え、5月にはマリナーズへ、7月はジャイアンツ、その1週間後にはエンゼルス、8月下旬に戦力外を通告された後にマーリンズに拾われた。シーズン途中でのトレードはよく聞く話だが、「1シーズン5球団男」はなかなかいない。
「直球が速くて変化球は多彩、制球力も高い。なのに、便利屋扱いから抜け出せずにいました。走者を出すと、別人になっちゃうんですよ。セットポジションになるとコントロールが甘くなったり、走者に気を取られて長打を食らったり」(現地記者)
走者を置いた場面で使えないのなら、日本の野球には最も不向きな投手ではないのか…。高津臣吾監督はバウマンの「改造」に着手しなければならない。
古い話だが、王貞治の756号はヤクルト戦で放たれた。ヤクルトは「メモリアル被弾」に縁があるようだ。
(飯山満/スポーツライター)