「『毎度おさわがせします』に出ている綺麗な女の子が、隣の中学校に通っているらしい」
今年の流行語大賞になったドラマ「不適切にもほどがある!」の時代設定から1年前の1985年、中山美穂と同世代である筆者の地元に衝撃が走った。
中山美穂のデビュー作「毎度おさわがせします」は、当時14歳だった木村一八とミポリンの「体を張った演技」で中高生の度肝を抜く話題作だった。ミポリンはあっという間に国民的アイドルへと上り詰め、隣の中学校に登校するどころではなくなってしまった。
そんなミポリンが54歳の若さで急逝した。所属事務所が発表したのは「事件性はなく、入浴中に起きた不慮の事故」。浴槽での溺死と思われる。ショックと同時に、彼女の死を自分と重ねて「突然死」や「ひとり暮らしのリスク」に漠然とした不安を抱いた人は少なくないだろう。
「自宅での事故」による死者数は、国の統計などによると、年間1万6000人。その中で最も多い死因が「入浴中の溺死」で、年間8000人を超える。次いで不慮の窒息、転落…と続く。これは年間交通事故死者数の、実に4倍にあたる。
自宅での事故死者の9割は持病を抱える65歳以上だが、働き盛りの64歳以下が年間2000人近く、自宅でのアクシデントで亡くなるというのは、ショッキングな数字である。
真冬の突然死、事故死を防ぐために、どんな自衛策を取ればいいのか。
①入浴前と入眠前にコップ1杯(180ml)以上の水を飲む
②銭湯など共同浴場を利用する
③ベッドの周りを整理整頓、ぬいぐるみなどを置かない
④深酒を避ける
⑤高所作業は業者に頼む
⑥まめに部屋を片付け、トイレや浴室、洗面所の前にモノを置かない
⑦スマホ、携帯電話、ウェアラブル端末は必携
冬場に多いヒートショック死は「急激に血圧が下がる」ことで起きる。入浴前には必ずコップ1杯から2杯の水を飲み、周囲の目がある緊張感から血圧を上げるホルモンが出るので、銭湯やスポーツジムの共同浴場を利用することでもヒートショックは防げる。
忘年会、新年会シーズンに深酒からの嘔吐による窒息死、風呂場での溺死を防ぐため、飲酒は適正量で。地震でベッドに物が落ちてきて鼻と口が塞がれて窒息、トイレや洗面所のドアが塞がれ、閉じ込められて凍死、餓死することもある。何かあった時にすぐ助けを呼べるよう、家の中でもスマホを持ち歩くか、意識を失った自分の代わりに緊急通報してくれるApple Watchなども、ひとり暮らしの心強い味方だ。
突然死のみならず、闇バイト強盗も心配な昨今、故郷でひとり暮らしをする親や今年1年頑張った自分のために、今年のクリスマスにはウェアラブル端末を贈ってはどうだろうか。
(那須優子/医療ジャーナリスト)