米CDC(アメリカ疾病対策センター)は12月8日、強毒型鳥インフルエンザ(H5N1型)に感染して重症化した患者を、アメリカ国内で初めて確認したと発表した。
CDCによれば、患者は南部ルイジアナ州在住の高齢者(65歳超)。自宅で飼育していた鳥や、死んだ鳥などに接触して感染したとみられており、もともと基礎疾患を抱えていたことから、重度の呼吸器障害に陥っているという。
強毒型のH5N1については、日本国内でも養鶏場のニワトリなどからヒトへの感染が確認されているほか、野鳥からタヌキなどの哺乳類に感染したケースも報告されている。アメリカも含めて「ヒトからヒトへの感染」はいまだ生じていないとされるが、今回、アメリカで初めて確認された重症化例には、どのような危険が潜んでいるのか。
ウイルス感染学の専門家は、次のように警鐘を鳴らしている。
「強毒型のH5N1に感染した患者が重症化したということは、危険なH5N1ウイルスが患者の体内で大増殖し、天文学的なペースでコピーが繰り返される状況にあることを意味しています。このような場合、大増殖のプロセスで生じる『コピーミス』によってウイルスが次々と変異し、その中から『ヒトヒト感染』を引き起こす変異ウイルスが出現してくる。その意味でも、衝撃的な症例と言っていいでしょう」
では、強毒型鳥インフルエンザのヒトヒト感染による大流行が始まった場合、日本国内ではどれくらいの規模の健康被害が予測されているのか。この専門家が続ける。
「厚生労働省が、過去に流行した軽度から中度の弱毒型の新型インフルエンザを参考に弾き出した試算によれば、弱毒型といえども、日本国内での死者数は17万人から64万人に達すると予測されています。当然ながら強毒型であれば、被害はより甚大になる。強毒型のH5N1ウイルスによる新型インフルエンザが日本国内で大流行した場合、死者数は少なくとも100万人を超える規模になるとみて間違いないでしょう」
さらに言えばその場合、医療機関に搬送される入院患者の数も、死者数の数倍規模に上る。まさに戦慄の「衝撃警告」である。
(石森巌)