ソフトバンク・甲斐拓也の巨人移籍で、ファンの誰もがこう思ったのではないだろうか。「捕手が多すぎる」と。
確かに今季の巨人は岸田行倫と大城卓三に加え、菅野智之が先発登板した24試合は小林誠司が捕手を務めている。2019年ドラフト5位の山瀬慎之助も2試合ながら1軍でマスクをかぶるという4人体制だ。多くの球団ではほぼ正捕手が決まっており、巨人の捕手の多さは突出しているといっていいだろう。
阿部慎之助監督は来季、甲斐を正捕手に据える目論見で、岸田や大城はともかく、菅野専用の小林は人的補償のプロテクトから外れる可能性が出てきた。2020年からの4年間、原辰徳監督にガッツリと干されていた小林にとっては、やっと掴んだ1軍枠だったのだが…。
一方、扇の要を失ったソフトバンクが、小林を獲得する可能性はあるのだろうか。小林は来年36歳になることもあり、人的補償として獲得するには年齢が問題になってくる。もっとも、すでに巨人の「コーチ手形」が確約されているという話もあり、引退までの数年間、他チームの空気を吸うのは、本人にとってもアリではないか。
一部では「大城がプロテクトを外される」と予想する向きもある。大城は来季、打力を生かして一塁手にコンバートされる可能性があるが、岡本和真や外国人が守備につく機会が多く、その立場は危うい。大城はFA権を行使せずに残留を決めているため、仮にプロテクトを外れていたとしても、すぐにまた行使されるおそれはあるが、ソフトバンクが甲斐に匹敵する期待と評価を与えれば、正捕手の座を掴むことは可能だろう。
ソフトバンクファンの間では来季の正捕手の話題でもちきりだが、実はソフトバンクはこれまで、人的補償を選んだことは一度もない。とはいえ、今回ばかりは甲斐の抜けた穴は想像以上に大きく、リードや守備面で実績のある小林は、実は有力な人的補償選手になりうるのではないか。
(ケン高田)