自民党の小野寺五典政調会長が先日、「プライムニュース」(BSフジ)に出演した際、所得税が発生する「年収の壁」を103万円から、国民民主党が主張する178万円に引き上げた場合について、こんな話を展開した。
「玉木さんのお話をみると納税者の方を向いたと言っていますが、私たちは国民の方を向いた政策を行うべきだと思っています。(国民民主党の主張通りになると)今回の税制で7兆円、8兆円が失われ、その代わりに所得が上がる層があるかもしれません。ですが日本国民の6割は、実は納税をしていない人ですから、この低所得者の人は直接、物価高に大きな影響を受けているわけです。この人たちに支援する予算もなくなってしまう」
批判された国民民主党の玉木雄一郎代表(役職停止中)は早速、X上でこれに答えた。
〈令和3年(2021年)の給与所得者4692万人、申告所得者633万人の合計5325万人が所得税を納めている人として、令和3年の日本の人口が1億2551万人。よって、比率を計算すると、所得税を納めている割合は42.4%となります。所得税に関して言うと、納税者4割、非納税者6割というのは、そんなに外れた数字ではないかもしれません〉
小野寺氏の指摘は間違いではないと認めたのである。
ただ、住民税については、非課税世帯の割合は、
〈全国的に見ると、非課税世帯は全世帯の約2割程度と言われており、所得税よりは納税されている人の比率は高いと考えられます〉
その上で、次のように反論したのだった。
〈税金を払っていない(払えない)国民のことを考えるべきという小野寺さんの主張はその通りなのですが、だからといって、税負担をお願いしている国民の負担が高いままでいいのかということにはならないと思います。国民民主党は、働いて税金を納めている納税者の立場に立った政策・政治をブレずに進めます〉
小野寺発言の反響は大きかった。「世帯主が妻や子供ら家族分を稼いで納税している。非課税世帯数で見ると2割もいないのに、政府はやたら非課税世帯ばかり優遇する。全く国民を見ていない」「現役世代を敵に回した」など、国民からは反発の声が出ているのだ。
小野寺氏は最近、「なぜ学生が103万円まで働かないといけないのか」と発言したことも物議を醸した。
小野寺発言は間違いではないのだろうが、圧倒的に玉木氏支持が多いようだ。両者の対立が2025年6月末の都議選、7月の参院選にどのように影響を与えることになるのか。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)