これは雑草魂で超小型契約を乗り切るしかない。
阪神からポスティングシステムを利用してフィリーズとマイナー契約を結んだ青柳晃洋の今後はどうなるのか。交渉期限締め切りとなった米東部時間1月17日午後5時(日本時間18日午前7時)までに、どの球団からも契約締結の正式発表はなく、実際は締切の2時間前に決まる駆け込み成立だったという。
ドラフト5位で阪神に入団しただけに、青柳はマイナー契約も辞さずの姿勢を示していた。超小型契約でもメジャーへの第一歩を踏み出したことに、まずはひと安心だが、これから茨の道が待ち受けていることは間違いない。
長年、メジャーリーグを取材するスポーツライターは、現状を次のように話す。
「フィリーズはMVPに3度輝いているブライス・ハーパーなどが在籍する強豪チーム。現時点でメジャーのパワーランキングでは、連続世界一に向けて補強の手を緩めないドジャースに続く2位です。日本では実績のある青柳ですが、念願のメジャー昇格を勝ち取るのは、かなりハードルが高いと思います」
マイナー契約とはいえ、フィリーズの春季キャンプには招待選手として参加することが決まっており、首脳陣の目に止まればロースター枠の40人に滑り込む可能性は残っている。開幕当初はマイナーで実績を積み、上から声がかかるのを待つのが現実的だろう。
ただ、マイナー生活は、12球団随一の人気球団でプレーしていた青柳の想像を超える。前出のスポーツライターは、困窮が予想される生活を憂うのだ。
「2023年にマイナーリーグ契約期間は5年間で、従来の最低年俸の2倍以上に増額されました。3Aは4万5800ドル(約709万円)、2Aは2万7300ドル(約423万円)になりましたが、普通は5万ドル(約775万円)から7万ドル(約1085万円)といったところでしょうか。マイナーでは年俸が分割で支払われるのは、シーズン開幕以降です。キャンプやオープン戦がある2月と3月は1日30ドル(約4650円)の手当が支給されるだけ。日本で2億円以上の年俸をもらっている人間に耐えられるか、という話ですよ」
スポーツ紙メジャー担当記者も、
「単身赴任ということですが、マイナーだと試合終了後にバタバタでのバス移動は当たり前。ハンバーガーを口に加えたままバスに乗り込むのは日常茶飯事です。そろそろベテランと呼ばれる年齢になった青柳だけに、栄養のバランスなど食事面での心配はありますね」
同じマイナー契約とはいえ、ドジャース入りした佐々木朗希は年俸とは別に、10億円以上の契約金をゲット。数年後には大谷翔平のような大型契約を結ぶ可能性が高い。マリナーズとマイナー契約した藤浪晋太郎は独身の上、2年間のメジャー契約で15億円ほどを手にしている。蓄えは豊富で悠々自適であり、渡米前には銀座の高級寿司店を訪れたり、競馬場で楽しむ姿を自らのインスタグラムのストーリーズにアップする余裕を見せている。
メジャーのキャンプインは、刻一刻と迫っている。超小型契約の青柳の挑戦を、球界内では応援する声が多いという。どこまで登っていくことができるか。
(阿部勝彦)