この秋のGⅠシリーズを締めくくると同時に、24年(令和6年)の中央競馬の掉尾を飾るホープフルS。中山を舞台に芝2000メートルで争われるが、GⅠに昇格したのが17年。GⅠ戦としてはまだ6回しか行われていないが、春のクラシックに向けて重要度を増す争いとなった。
2歳馬の総決算としては、先に行われた朝日杯FS(京都芝1600メートル)があるが、そちらはNHKマイルCを視野に入れている馬が圧倒的に多かった。それに対してこちらは、コース、距離と条件が同じということで、皐月賞を占う重要なGⅠ戦と位置づけていいだろう。
ちなみに、ここを勝って春のクラシックの栄光を手中にしたのは、近年では16年レイデオロ(皐月賞)、18年サートゥルナーリア(皐月賞)、19年コントレイル(三冠)だ。
そうした視点で顔ぶれを見ると、各厩舎の期待馬がズラリと居並び、それらがふるいにかけられることを思うと、勝負の怖さを味わわされる一戦でもある。
女傑アパパネの子、アマキヒ、東スポ杯2歳S勝ちのクロワデュノール、叔父がダービー馬フサイチコンコルドのピコチャンブラック、札幌2歳Sを制したマジックサンズ、そして東京芝1800メートルで行われたアイビーSで、2歳戦の史上2位タイの好タイムで勝利したマスカレードボールといったところが有力候補として名を連ねるが、登録馬のどれもが素質を秘めており、どう転ぶか予断を許さない。
とにかく見応え満点であることは間違いなく、馬券的にも面白いGⅠ戦と言えそうだ。
ただし、穴党としては前述した人気どころを推すわけにはいかない。期待を寄せてみたいのは、松永幹厩舎の2頭、デルアヴァーとヤマニンブークリエだ。
潜在能力の高さから、特に狙ってみたいのは前者。父は14戦無敗の欧州王者で、種牡馬としても高い評価を得ているフランケル。母は中距離の交流重賞で6勝(全10勝)を挙げたダート女王で、米国に渡って交配して生まれた子が、このデルアヴァーである。
福島の新馬戦を強烈な末脚を発揮して勝ち上がり、続く東スポ杯2歳Sは勝ち馬とコンマ5秒差の5着。しかしこの時は、4カ月半ぶりの実戦で、馬体重が前走比で14キロ増と少し重め残りだった。それでも前残りの流れの中、最速タイの上がり脚を披露しており、母に似ず、芝でこそ本領を発揮してくるタイプだろう。そのあたりは祖母ヘヴンリーロマンス(天皇賞・秋)の血が色濃く出ているとみてよさそうだ。
この中間はいたって順調で、稽古内容は実に素軽かった。休み明けを使われての変わり身を、大いに見込んでいい。
一方の後者は、やや決め手を欠くだけに、伏兵の域は出ない。とはいえ、前走の黄菊賞では、先日の朝日杯FSで2着に頑張ったミュージアムマイルの2着に粘り、力のあるところを見せつけた。逃げて目標にされたことを思うとなおさらである。
京都でデビュー勝ちした時は鋭い末脚を見せつけてのもの。脚質に自在性があるのも魅力だ。
松永幹調教師は「共に素質は十分。クラシックを意識できる馬で、どんな競馬をしてくれるか楽しみ」と期待感を口にする。
曾祖母は北米のGⅠ勝ち馬。こうした血統的背景から、両馬とも目が離せない存在だ。