ひょっとしたら、2025年のメジャーリーグ・ニュースの主役に躍り出るかもしれない。ポスティングシステムによるメジャーリーグ移籍を目指す阪神の青柳晃洋が「決まるのは、きっと年越し」と交渉過程を明かしたのは、「グランキューブ大阪」で行われた12月22日のトークショーでのことだった。
メジャーリーグのFA市場は、ビッグネームから順番に移籍先が決まっていくもの。青柳から出た「年越し」発言は間違っていないが、時間がかかるという意味では「プラスの評価」が聞こえてきた。在米ジャーナリストが言う。
「失礼ながら、青柳は米球界では無名に近い存在です。東京五輪の代表メンバーに選ばれていますが、そこで目覚ましい成績を残したわけではありません。この2年間、ファーム降格となっていた期間も長いので」
しかし複数のMLB球団編成部が、NPBを担当している現地記者やデータマンたちに「もうちょっと詳しい資料はないのか」と問い合わせをしていることがわかった。ア・リーグ中部地区のスカウトはこう話す。
「青柳のことをアンダースロー系の変則投手と捉えていますが、過去に米球界に挑戦したどの日本人変則投手とも、タイプが異なるんです」
これまでMLBに在籍した日本の変則投手といえば、現ヤクルト監督の高津臣吾、建山義紀、牧田和久らが思い出される。しかし青柳は彼らと異なり、平均球速が86マイル(約140キロ)を超えている。青柳自身、低めの変化球を生命線にしているが、高津らのような抜群のコントロールはないものの、フライアウトではなくゴロアウトが多い。ここにアッパースイングのパワーヒッターが多い米球界の事情が重なって、「どうしてゴロアウトが多いんだ」と首を傾げるMLBスタッフが少なくないそうだ。
こうした「いい意味」での疑問の声を聞かされると、青柳は米球界で活躍するのではないか、という気がしてくるが、こんな指摘もある。
「藤浪晋太郎のケースがあります。渡米前の成績は下降ぎみ。でも100マイル(160キロ強)の剛速球と鋭いスプリットを投げられるということで、きっかけがあれば覚醒するのではないかと期待する向きはありました。でも…」(前出・在米ジャーナリスト)
青柳も制球にやや難のある投手だ。そのあたりをしっかり見極めるために「もっとデータが必要」だという。「アンダースロー系の変則投手なのに平均球速が速い」というプラス材料と「制球にやや難あり」のマイナス材料。青柳の交渉はやはり、時間がかかりそうだ。
(飯山満/スポーツライター)