我が家の猫のごはんが徐々に変わっていくのは、2016年にマンションから一軒家に引っ込してから。広くなった一軒家で、ジュテ1匹だけでは寂しそうなのと、近くを幹線道路が走っていて、マンション時代のように外に出すことができないので遊び相手が必要だと考え、保護猫のガトー(写真)をもらったのがきっかけとなった。
ガトーをお世話してくれたのは、保護猫活動をお手伝いしているMさん。名前をどうするかとなった時にMさんが、
「この猫(こ)はガツガツとすごく食べる。名前はガツがいいんじゃない!?」
そんな笑い話になった。とはいえ、
「いくらなんでもガッつくからガツじゃかわいそうだよ」
そう言うと、連れ合いのゆっちゃんが、
「イタリア語かスペイン語で、猫のことはガツというんじゃなかった?」
調べてみると、イタリア語ではgatto、スペイン語ではgato。
「それじゃ、ガト、最後を伸ばしてガトーにしよう」
そうして名前が決まったのだった。そしてその瞬間から、ガトーの大食い生活がスタート。6~7年経って、ガトーは体重10キロを超える巨体になっていた。
とにかくよく食べる。ジュテは舌先でチョロチョロ食べる猫なら、ガトーは口からガバッといく。量も食べる速さも、ジュテとは比べものにならない。
猫のごはんを買う店は、近所の小さなペットショップからマツキヨのペットコーナーに変わった。そこで売っていたのが「三ツ星グルメ」のカリカリ。ジュテの主食「銀のスプーン」の缶詰と「Sheba(シーバ)」のカリカリに、「三ツ星グルメ」のカリカリが加わった。
大きな変化をもたらしたのは、春先になると毎日のように食べていた、好物のカツオ。刺し身の端っこの何切れかを焼いて食べさせたら、2匹とも飛びついた。毎日でもOKだ。缶詰やカリカリに飽き、味変の焼きカツオが主食のようになった。
さらに、鮭にもチャレンジ。塩分は腎臓によくないと聞いていたので、塩をしていないものを買ってきて焼いてあげたら、一心不乱においしそうに食べる。
缶詰やカリカリには、いろんな物が含まれる。それに比べ、カツオも鮭も素材そのものだから、より健康的ではないか。少なくとも食べ過ぎのガトーにはヘルシーだろう。
ただ、カツオも鮭も、脂っぽいのは受け付けない。舌でちょっと確かめ、においを嗅いでわかると、プイッと横を向いてしまう。「脂がのった魚がうまい」と言う人は多いが、ジュテもガトーも脂っぽい魚は嫌いらしい。個人的にもカツオは脂のない初ガツオが好物なので、2匹とも飼い主に似ている。
その後、マツキヨはペットフードが少ないことに気が付き、自宅のすぐそばのドン・キホーテ、マツキヨとは目と鼻の先の島忠でも買うように。従来の基本食に加え、バリエーションが一気に増えた。それやこれやで、猫の食生活はとても豊かになった。
問題はやはり、ガトーの巨大化だ。手のひらほどだったのが、今では見違えるようである。動物病院に行くたびに「また体重が200グラム増えましたよ」などと言われ、飼い主としては恥ずかしいやら。
「何を食べさせているんですか」と医師に聞かれて、食べているものを説明すると「カリカリよりは缶詰の方がカロリーも少なくて、ヘルシーですよ」と言われ、様々に変えてみた。しかしとにかく食いしん坊なので、体重増はノンストップである。
そこで病院で勧められたのが「EnaALA」というペット用のサプリメントだった。10キロ未満は朝か夕方に1錠、10キロ以上は1~2錠。ガトーには1錠をカリカリの皿に入れて食べさせるか、抱きかかえて口を開けさせ放り込むかの方法で続けたが、飲むのを嫌がるようになり、服用を中止した。
代わって勧められたのが、猫用の療養食「RD」だった。ちょっとにおいが強いので食べるだろうかと不安だったが、お皿に入れておいた分が1日かけてなくなっていることが多かった。
病院に行くと「20グラム体重が減りました」などと言われ、病院のスタッフと一緒に拍手しながら喜んだり。なんともいじましい話である。猫にとっての10グラムは人間の10倍だそうで、20グラムなら200グラム。それで減った減らないで一喜一憂、というわけだ。
我が家の「きのう何食べた?」猫篇は、ジュテが死んでクールボーイ、そうせきが加わって、さらにややこしくなる。
(峯田淳/コラムニスト)