「猫を飼い始めると、人は猫の奴隷になる」
飼い主のこんな言葉をよく耳にする。生活が猫中心になるためだが、その一番の理由は「ごはん」だ。
食べたいもの、食べる時間は猫によってまちまち。他頭数飼いなら有無を言わさず、強制的にごはんを与えている人もいるだろう。だが2、3匹の場合は個々の性格がよくわかるのでつい甘やかし、その猫に合わせてごはんをあげてしまいがちになる。
我が家には最初の猫のジュテがいて、2016年に引っ越してからはガトー、2019年にクールボーイがやってきて、3匹になった。ジュテはマイペースで食べ方がヘタ、ガトーはガッつき、クールボーイはというと、吐き癖がひどい。食べたそうにしているので兄猫2匹と同じ量を与えると、2回か3回に1回は吐いてしまう。今もごはんをあげた後に間をおいて、吐いていないかをチェックするのが日課になっている。
クールボーイは捕まえようとすると逃げるので、病院で診てもらいたくても連れていくことができない。獣医師に事情を話して吐き止めの薬を処方してもらったが、捕まえて直接、薬を飲ませることができないのだ。今は吐く回数が減り、3日に一度とか、しばらく吐かなくなったりすることもあるので、そのままにしている。
連れ合いのゆっちゃんが言うには、
「この猫(こ)は胃袋が他の猫に比べて小さいんじゃないの?」
そんなことも考え、クールボーイにはジュテやガトーよりも少なめにあげるようにしている。
2021年にジュテが死んで、2022年にそうせきがやって来た頃には、主食に大きな変化があった。量販店の「ドン・キホーテ」で「アイシア」という会社の小さな缶詰の3個セット(1缶60グラム)を見つけたのがきっかけだ。
このシリーズはしらす入りかつおや削り節入りかつおなど、数種類ある。原材料はかつおなどをメインに、混ぜ物が少ない。これはダイエットが必須なガトーには最適だった。フタを開けると煮凝りのような感じで、人間が食べてもうまそうだ。
3匹ともこれは好きみたいで、1缶を3匹に分けて朝と夕方に合計2缶あげるようになった。だが、これがクセ者だった。朝と晩にあげるのが習慣化し、時間に縛られるからだ。
とりわけしんどいのが朝で、4時くらいになると騒ぎ出し、3匹が1階に集まってくる。そして「ごはんはまだか」とウロウロ。ベッドから起き出すのが苦痛でも、猫は待ってはくれない。すっトボケていると、暴れ出す音がする時もある。
夕方も16時を回る頃には3匹が現れて、ソワソワし始める。そうなるとやはり、逆らえない。
ただ、そうせきは食べたいフリだったり、すぐには食べず、しばらく経ってから戻ってきて、なぜか隠れるように食べていたりする。しかもジュテと同じで、バクバクやらず舌に乗せようとしながら、ヘタくそに食べる。その姿がなんとももどかしい。
そうせきがすぐに食べず、残したままだと、クールボーイがやってきて食べたりする。そうするとクールボーイは胃袋のキャパをオーバーして、吐いてしまうのだ。2、3匹飼う難しさかもしれない。
もうひとつの大きな変化は「ちゅ~る」を食べ始めたことだ。テレビCMでチューブから猫に舐めさせている姿を見て、変な食べ物だなと思っていたのだが、人にもらったのをガトーに差し出したら飛びついた。それからは、おねだりの連続だ。
「ちゅ~る」の説明をみると、1日に4個が目安と書いてある。それを守ってあげているが、ガトーの催促はハンパじゃない。1階に飾り棚があるのだが、昼頃に降りていくと、そこで鬼の形相で待ち構えている。ニャオ、ニャ~オと鳴きながら、目を三角にして怒っている。
ひとまず1本だけあげてごまかそうとすると、通りすがりに右手を出して呼び止めようとする。とにかく目が怖い。仕方なくもう1本をあげてガトーの視界から逃れ、その場を去るのだが、やや時間が経って目を合わせると、また「ちゅ~る」を要求している。ガトーはきっちりノルマの4本になるまで、許してくれない。どうして何本食べたかわかるのか。それが不思議で仕方がない。
缶詰も同じものをあげていたら飽きる。そこで今はかつおをそのまま加工、保存料などが無添加の「CIAO(チャオ)」の焼本かつおなどで味変させている。
カリカリもバリエーションが広がった。ダイエットが必須で腎臓病が心配なガトーのためには減塩、腎臓の健康保持を謳った「COMBO(コンボ)」や「ミネット」のまぐろチップなどをあげている。ジュテが死ぬ前に牛の生肉を食べさせ、贅沢すぎると思ったが、今飼っている3匹はそれ以上にわがままでグルメだ。
ちなみに、12月の猫の食費は正月用に買いだめしたこともあり、2万8517円だった。フー。
(峯田淳/コラムニスト)